最初の違和感
私の義母は昔ながらの価値観を持つ人で「女性は男性を立てるべき」「女性は家庭を守るべき」といった考えを日頃から口にしていました。長男を出産した際にも「男の子でよかったね」と言われ、私はそのときから小さな違和感を抱いていました。
そしてこの日は次男の出産後で、私は赤ちゃんを連れて義実家を訪れていました。無事に出産できた安堵はありましたが、義母との会話には、どこか言いようのない不安もあったのです。
「保険ができた」という言葉
しばらく世間話をしていたときのことでした。義母は次男の顔を見ながら、嬉しそうにまた「男の子でよかった」と言い出しました。心の中では「またか……」と思いつつも、私はなんとかサラッと流していました。けれど、その直後に続いた言葉は、さらに予想外のものでした。
義母は「田中家の跡継ぎに保険ができた」と言ったのです。ついにカチンときたものの、私はとっさに言葉を返すことができませんでした。場の空気を壊したくない気持ちや、反論しても分かってもらえないかもしれないという諦めが一気に押し寄せ、結局その場では、曖昧に笑うことしかできなかったのです。
義姉と夫の冷静すぎる一言
いたたまれない気持ちでその場から立ち去ろうとしたときでした。「跡取りとか関係ないでしょ。この子の人生はこの子のもの。周りが決めることじゃない」間髪入れずにそう言ったのは、義姉でした。
さらに夫も、静かに呟きます。「自分だって女の子産んでるしね」その一言で、場の空気は一瞬にして変わりました。義母の顔からは笑顔が消えて、気まずそうな表情を浮かべていました。
私はただその場に立ち尽くしながら、胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ軽くなるのを感じていたのです。
人それぞれの価値観
しばらくの沈黙のあと、義母はぽつりと「ごめんなさい」と口にしました。その様子を見て私は、義母自身、「長男が大事」「家を継ぐのは男」といった価値観に縛られて生きてきて、知らず知らず口にしてしまったのかもしれないと思いました。
完全には割り切れませんが、それでも義姉と夫の言葉に救われたのは確かです。あの場で否定してくれた人がいたこと。それだけで、また前を向けた気がしました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

