「おめでとう」の代わりに返ってきた言葉
私の直属の上司であるチーフの木村さん(仮名・40代女性)は、とても仕事ができる方ですが、その一方で長期的に休むことになる「妊娠・出産」に対しては、あまり快く思っていないように感じていました。
そんな中、私は第一子を妊娠し、木村さんに報告することになりました。勇気を出して伝えたものの「おめでとう」の言葉はありません。「いつ復帰するの?」「1年も育休取らないよね」と質問責めにされ、その場の空気が一瞬で凍りついたのを覚えています。
追い詰められていく日々
その日を境に、木村さんの言葉はさらに厳しさを増していきました。つわりがひどく会社を休んだ日にも「いつから出社できる?」「時短なら働けるよね?」といったLINEが届き、次第に心も体も限界に近づいていったのです。
ある日、勤務中に強い吐き気に襲われ、私は早退を申し出ました。しかし木村さんは険しい表情で、「あなた休みすぎじゃない? 妊娠は病気じゃないのよ」と言い放ったのです。その言葉に、悔しさで涙が出そうになりましたが、何も言い返すことができませんでした。
取引先からの電話
そのとき同僚が「チーフ、高山物産様(仮名)からお電話です」と割って入ってきてくれました。私はなんとか涙を堪え、木村さんの様子を見ていましたが、どこか異変を感じていました。
取引先との会話が進むにつれて、木村さんの表情はこわばり、みるみる顔色が変わっていきます。そして次の瞬間、木村さんの声色が明らかに変わりました。「申し訳ありませんでした!」と、これまで見たことのない勢いで謝罪し始めたのです。
思わぬ形で返ってきた代償
実は「あなた休みすぎじゃない? 妊娠は病気じゃないのよ」という木村さんの発言が、電話を通じてそのまま取引先に聞こえてしまっていたのです。しかも電話の相手は、偶然にも妊娠中の女性でした。その言葉に対し、その場で厳しく指摘され、その後、この一連の出来事は上司にも報告されました。
それ以来、木村さんの態度は一変し、以前のような発言はなくなり、私も無事に産休に入ることができました。木村さんのあの青ざめた顔は、今でも忘れられません。
妊娠中の方や子育て中の方も含め、誰もが働きやすい会社になってほしいと改めて感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

