保育園からの苦痛の呼び出し電話
「お熱が38.8度あります。お迎えをお願いできますか?」保育園からの電話を受けたとき、私の頭の中では仕事の段取りと謝罪の言葉が同時に走り始めます。
子どもが心配な気持ちと、職場への申し訳なさ。この二つを毎回抱えながら「すみません、早退させてください」と伝えるのが、どれほど苦しいか。経験したことがある人なら絶対に分かるはずです。
その月だけで3度目の早退。電話口での「またか……」という自分の言葉に自己嫌悪。「迷惑」と思われているのは分かっていました。
場を凍らせた後輩の一言
「お先に失礼します」とカバンを持った瞬間、既婚で子供がいない後輩・林さん(仮名・20代女性)の声が聞こえました。「子持ちってズルいですよね。いつでも早退できて」
その言葉が聞こえた瞬間、足が止まりましたが振り返れなかったし、何も言えませんでした。しかし廊下に出た瞬間、涙が溢れて止まらなくなりました。保育園への道中、「私、働いちゃダメなのかな? 」と泣きながら自問し続けました。
ほどなくして、林さんが妊娠し、育休を経て職場に復帰しました。
ずっと応援してくれていた上司
立場は完全に逆転します。以前の私以上の頻度で、保育園からお迎え依頼の電話が林さんにかかってきました。林さんの顔は「勘弁して」と言わんばかりの表情。
すると、成人した子供が2人いる上司(仮名・50代女性)が「前に、いつでも早退できて子持ちってズルいって言ってたけど、同じ状況だね」「子育てしながら仕事するって、自分の意思だけでどうにもならないことがあるって、分かった?」と。
林さんは目を真っ赤にして、その日も早退しました。
「あの日」の謝罪
翌日、林さんは私のもとに来て言いました。「あのとき、ひどいこと言いました。 本当にすみませんでした。 咲子さんがどれだけ大変だったか、やっと分かりました」
あの日の悔し涙が、全部報われた気がしました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:M.Mochizuki
大学卒業後、薬剤師として勤務。第二子の出産をきっかけに、ファイナンシャルプランナーやオンライン秘書などにも転身。それらの経験を経て、出会った人間模様や教訓を記事として執筆中。特に、夫婦関係や子育て、家族の在り方をテーマに生活者のリアルに寄り添うコラムを得意とする。

