昨今、さまざまなハラスメントが取り沙汰され、職場でのコミュニケーションにも細心の注意を払う人が増えています。とりわけ職場での人間関係の距離感は難しく、誤解を生むこともあるようで……。今回は、私のお客様の実体験をご紹介します。
“君付け”で
私の勤める会社には、Sという社員がいます。忘年会や打ち上げなど飲み会の場になると、彼女は必ず男性社員の下の名前を聞き出し、それ以降「〇〇君」と呼ぶのです。
理由を尋ねると「弟と同じ名前だから、つい君付けで呼んじゃう」と笑って答えていました。私は一人っ子でSの感覚を理解することができず、そういうものなのかぁ、と深く考えていなかったのです。
やっかみからの嫌がらせ
しかしその呼び方を、男性へのアピールだと受け取る女性社員もいました。次第に不満が募り、数人がSに対して嫌がらせを始めたのです。
お土産を渡さない、持ち物を隠すなど、最初は小さな行為でしたが、やがてSの私物をゴミ箱に捨てるといった行動にまでエスカレート。それでもSは気にする様子もなく、男性社員を君付けで呼び続けていました。
昼休みの呼び出し
ある昼休みのこと。ついに女性社員たちがSを呼び出し、「男に媚びるな」と強く告げます。しかしSは「媚びてるつもりはない」と反論。それに対し「アンタ、弟と同じ名前って何人に言ってるの? 嘘だってバレバレなんだよ!」と追及を続ける女性社員たち。
するとSは「弟、5人いるんです」と答え、スマホを取り出しました。そこにはSと両親らしき人物、そして似た顔立ちの男性5人が写っていたのです。「うちは連れ子同士の再婚で、弟が5人いるんです。名前も本当に同じなんですよ」とスマホ画面を見せながら説明を始めました。
誤解の終わり
「嘘じゃないです。本当に弟と同じ名前なんです。そっちこそ陰湿な嫌がらせはやめてくれませんか」と訴えるS。引くに引けず、なおも大声を浴びせる女性社員たち。そこに騒ぎを聞きつけた部長が仲裁に入りました。
女性社員は注意を受け、嫌がらせをやめることに。Sも勤務中は苗字で呼ぶよう徹底されました。男性を誘惑するための言葉のあやだと思われていた行動は、実際には家庭の事情に根差したものだったのです。
思い込みや偏見から行動することは、深い誤解を生みかねません。だからこそ、物事を一方向からではなく、多面的に捉える姿勢を持ち続けることが大切だと感じました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

