積み重なる小さな苛立ち
「エレベーター、めっちゃ混んでてさ〜」午後1時5分。私の同僚の高田さん(仮名・40代女性)は毎日「5分」遅刻してお昼休憩から戻ってきます。デスクに戻ってきた高田さんは、手に持った新作のドリンクをこれ見よがしに机に置きます。
5分。怒鳴り散らすほどではないけれど、真面目に1時前にデスクに戻っているこちらとしては心がざわつきます。「事故」ではなく「確信犯」。その小さな積み重ねが、職場の空気をじわじわと悪くしていました。
善意の忠告への「逆ギレ」
ある時、他の同僚が勇気を出して声をかけました。「高田さん、みんな1時には席についてるから、少し早めに切り上げられない?」波風を立てないよう、精一杯の配慮を込めた言葉。
しかし、高田さんはストローをくわえたまま、「えっ、たった5分だよ? そんなにカリカリしなくても……。仕事、ちゃんと回ってるんだし良くない?」と言い放ったのです。
悪びれる様子もなく、むしろ「心の狭い人」扱い。その場にいた全員の思考が停止し、空気が一瞬で凍りつきました。
温厚な上司の一喝
その時です。 「その5分、僕は非常に高いコストだと判断しているんだが」振り返ると、そこには普段温厚な部長が、厳しい表情で立っていました。
「君の給与は1分単位で発生している。毎日5分、1ヶ月で約100分。高田さん、君は会社から、何もせずにドリンクを飲む時間を『盗んでいる』ことになるね」部長の冷徹な正論に、高田さんの顔から一気に血の気が引いていきます。
「でも、エレベーターが……」と震える声で言いかけた彼女に、部長は追い打ちをかけたのです。
戻ってきた本来の安らぎ
「他の社員は、その混雑を計算して動いているんだ。君だけができない理由は、能力不足か、それとも周囲への軽視か。どちらかな?」ぐうの音も出ない一喝。
能力不足と言われるのも、周囲をナメていると指摘されるのも、プライドの高い彼女には耐え難い屈辱だったのでしょう。翌日から、高田さんは12時58分にはデスクに座るようになりました。職場にに、ようやく本来の安らぎが戻ってきたのでした。
【体験者:30代・パート勤務、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:M.Mochizuki
大学卒業後、薬剤師として勤務。第二子の出産をきっかけに、ファイナンシャルプランナーやオンライン秘書などにも転身。それらの経験を経て、出会った人間模様や教訓を記事として執筆中。特に、夫婦関係や子育て、家族の在り方をテーマに生活者のリアルに寄り添うコラムを得意とする。

