「飼い犬に手を噛まれる」は、世話をしている部下や後輩などから、思いがけない裏切りを受けるという意味のことわざです。長い人生、そんな経験をすることもあるでしょう。後輩ではなく、実際に愛犬に噛まれることも……今回は私の友人の、飼い犬のエピソードをご紹介します。
大好きな小さな番犬
私は現在、夫、娘、そして結婚前から飼っている小型の保護犬「ハム」と暮らしています。ハムスターのような模様から「ハムちゃん」と名付けました。
小さな体ながらとても勇敢で、知らない人が訪ねてくると必ず吠えてくれるハム。友人や宅配業者には吠えませんが、怪しい勧誘や初めて会う人には必ず警戒の声を上げる立派な番犬です。騒音トラブルにならないか心配しつつも、私はいつも守ってくれるハムを誇らしく思っていました。
産後のある晩
娘が生まれてからも、決して噛むことなく、絶妙な距離感を保ちながら見守ってくれているハム。まるで我が子の安全を常に監視しているかのような姿勢に、私は安心感を覚えていました。
そんなある晩、突然「いて!!」と大声を上げた夫。驚いて飛び起きた私に夫は「ハムが俺の足を噛んだ!」と訴えました。足首にはくっきりと歯型が残っています。先ほど寝たばかりの娘も夫の大声で目を覚まし、大泣き。
ハムが人を噛むのを見たのは初めてで、私はただただ驚きました。
ハムの訴え
「どうしたの? 寝ぼけてたの?」と問いかけると、無言で何かを訴えるような目をしているハム。私は直感的にベビーモニターを再生しました。「もしかして泥棒でもいるんじゃ?」と疑ったのです。
映像には、夫のパジャマの裾を何度も引っ張るハムの姿。そして夫が寝返りを打とうとした瞬間、足に噛みついていました。その寝返りの先には、生まれたばかりの我が子。もしハムが噛まずにいたら、娘は窒息していたかもしれない。骨折していたかもしれない。
私が震えながら夫に映像を見せまると、夫はすぐに謝罪し、ハムへ感謝の言葉を述べました。
後にも先にも
ハムが人を噛んだのは後にも先にもこの一度だけ。娘を守るために、勇気を振り絞って行動してくれたのです。私は健気さに胸が熱くなりました。
それと同時に、育休中にもかかわらず、スマホゲームばかりでほとんど育児を手伝わない夫を噛んでくれたことに、少しだけスカッとした気持ちも抱いたのでした。小さな体で家族を守るハムの存在は、私の一番のヒーローです。
「飼い犬に手を噛まれる」は部下や後輩に裏切られることを意味することわざですが、「飼い犬に足を噛まれる」は“家族を守る”という新しい意味のことわざとして、思わずノミネートしたくなりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

