働くママのジレンマ、夕方の決断
春の新商品販促強化月間に入ったある日の夕方、チームはいつも以上に慌ただしく動いていました。そんな中、上司が明るく声をかけました。「今夜、決起会やろう。みんな来られるよな?」
私は手帳をぱらりとめくり、保育園のお迎え、夕飯の準備、お風呂に寝かしつけ……頭の中で一日のスケジュールを順にたどります。そして少し申し訳なさそうに、口を開きました。「すみません、子どもがいるので夜は難しくて……」その場は「そっか、仕方ないね」で終わったのでした。
「参加できない=戦力外?」と思った瞬間
ところが翌週になると、チームの空気が少しずつ変わり始めました。「昨日の飲みで方向性決まったから」「夜にアイデア出ししちゃったよ」いつの間にか、重要な話は夜の場でまとめられていることが増えていました。
昼間、誰よりも得意先を回り売上を伸ばしているつもりでしたが、なぜか輪の外にいる感覚を覚えました。さらに、次の飲み会の連絡も来ません。
配慮のつもりなのはわかっていても、「参加しない=戦力外、なのかな……」との奥には小さな疑問が沸いていきました。
伝えなければわからない、誤解の距離
そのモヤモヤを抱えたまま、まきさんは思い切って上司に話を切り出しました。「夜は参加できません。でも、案件にはきちんと関わりたいです」
少しの沈黙のあと、上司は答えました。「外しているつもりはなかった。むしろ負担をかけないようにと思ってた」私への配慮のつもりが、逆に距離感を生んでいたのです。
制限があっても成果は出せる
そこから、夜に決まった内容は翌朝必ず共有されるようになり、重要な決定は昼の会議で行う流れに変わりました。
子どもがいるから夜は出られない。それは事実です。それでも、参加しないことと戦力外であることは、まったく別物。働くママは、仕事をあきらめているわけではありません。ただ、戦い方が少し違うだけ。制限があっても、成果は出せる。そう腹をくくったのでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

