悲しみや大変さなど、数字で測ることができないものがこの世には溢れています。しかし、そういった測れないものを自分のものさしで測ろうとする人もいるのも現実。もしそんな人が職場にいたとしたら……今回は、私のお客様の、育児にまつわるエピソードをご紹介します。
同期の口グセ
私は30代の会社員。同期のAは双子の母で、育休も半年ほどで切り上げてフルタイム勤務をしています。そんなAの口グセは「双子育児に比べたら仕事の方が楽!」「双子育児に比べたら1人っ子育児や兄弟育児の方が楽!」。何かにつけて双子育児の大変さをアピールしてきます。
もちろん双子育児が大変なのは理解できますが、毎日繰り返されるその言葉に周囲は次第にうんざりしていました。
同期ランチ会
ある日、同期メンバーでランチをしていたときのこと。そのうちの一人が「年子育児も大変だよね」とつぶやいた瞬間、Aは激怒。
「年子育児と双子育児を一緒にしないで! 双子は妊娠の時からずっと大変だった! ベビーカーを押すのだって毎日毎日大変なんだよ!! 日本の道は狭すぎる!!」と、大声で怒鳴ったのです。
場の空気は一気に重くなりました。
育休中の新事実
すると別の同期が「Fはどう? 三つ子育児って大変?」と同期Fに話を振りました。Aは「三つ子?!」と動揺。実はFは双子を出産後、子連れの男性と再婚し、現在は2歳になる子供三人の母になっていたのです。育休中だったAはその事実を知らなかったのでした。
Fは「人数で比べることじゃないけど、大変は大変だよ! 笑」と冗談交じりに返答。続けて「ベビーカー狭すぎて通れないのめちゃ分かる! いいアイテムあったら教えてね! Aちゃんいいものいっぱい持ってそう!」と屈託のない笑顔でAに話しかけたのでした。
口グセの消えた日常
Fの笑顔と三つ子育児という現実に圧倒されたA。それ以来「双子育児に比べたら~」というフレーズを口にしなくなりました。
育児の大変さは人数や形態で単純に比べられるものではなく、それぞれに異なる苦労と喜びがあるのだと感じます。育児だけに限らず、「誰が一番大変か」ではなく「どう支え合うか」「どうとらえるか」が大切なのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

