朝の戦場、ママの二重戦線
ある日の朝ごはんでの出来事です。朝は戦場。子どもの支度、洗濯、ゴミ出し、朝食、すべてが同時進行で押し寄せます。やっとパンをトースターに入れ、目玉焼きを焼きながら皿を並べる私。コーヒーを注ぐ手も震え気味。焦りと眠気、2つの戦い。
「今日も一日がんばろう」という気持ちと、「もう、時間がない!」という苛立ちのせめぎ合い。
焼きすぎ? その言葉が怒りのスイッチ
そこへ夫が、まるで休日のカフェにでも来たかのような表情で席につきました。焼き色をチェックしながら、ぽつり。「ちょっと焼きすぎじゃない? マーガリンはさ、塗ってから焼いたほうがうまいんだよ〜」
その瞬間、私の中で警報が鳴りました。「今このタイミングで?」という気持ちと、怒鳴りたい衝動両方が同時に込み上げました。フライ返しを置く手が一瞬止まり、目の前で時間だけが走るような感覚の中、私の心は怒りと困惑でいっぱいになり、崩れそうでした。
笑いに変わる瞬間、朝の家族劇場
その空気を切り裂いたのは、横でランドセルを背負っていた小学生の娘。娘はにこっと笑い、悪気のない声で言います。「パパ、自分でやったら?」その一言で、リビングの空気が止まり、静寂のあとにスカッとした瞬間が訪れました。
夫は言い返すこともなく、マーガリンを手に取り、黙々とパンを食べ始めます。まるで最初から文句など言っていなかったかのよう。私は思わず吹き出し、笑いとともに胸の中のイライラがすっと消えていくのを感じました。
朝の戦場を救う、小さな一言
忙しい朝に必要なのは、完璧な朝食でも、正論の説教でもありません。ときには、子どもの一言が、いちばん平和で、いちばん強い解決策になることがあります。怒りの代わりに笑いがあり、緊張の代わりにほんの少しのユーモアがあります。
朝の小さな奇跡や、家族のさりげないやさしさ、そんな瞬間こそ、日常の中でつい忘れてしまいがちな「平和の秘訣」なのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

