独特な言葉遣いの新人
私の職場に、新人の男性社員・森くん(仮名)が配属されてきました。森くんは明るく、誰とでも気さくに話せるタイプです。ただ、仕事を一緒にする中で少し気になることがありました。それが、“言葉遣い”です。
たとえば、業務上のミスを指摘すると「なるほど〜」仕事のやり方を説明すると「参考にさせていただきます」どれも一見すると丁寧そうですが、上司に使う言葉としては少し違和感があります。悪気がないのが伝わってくる分、どう伝えるべきか悩んでいました。
やんわり指摘したつもりだけど……
ある日、私は思い切って森くんに声をかけました。「仕事の場や、目上の人に対しては、今の言い方はあまり使わないほうがいいよ」と、できるだけやんわり。
森くんは「分かりました!」と素直に返してくれました。ただ、その後も言葉遣いはほとんど変わらず、他の上司の前でも同じ調子の返事が続きました。
そのたびに、私は内心ヒヤヒヤしていました。(いつか、もっと厳しい場面で注意されないといいけど……)と、余計なお世話かもしれませんが、心配になってしまったのです。
取引先での思わぬひとこと
そんなある日、取引先へ森くんを連れて行く機会がありました。打ち合わせの中で、森くんはいつもの調子で「なるほどですね〜」「参考にさせていただきます」と返答。その瞬間、場の空気が一瞬だけ止まったように感じました。
すると取引先の方が、にこやかに、でも少し含みのある言い方で「森さんって、フレンドリーな方なんですね〜」とひとこと。冗談めかした口調でしたが、森くんは明らかに動揺している様子でした。その場は大きな問題にはなりませんでしたが、本人にはしっかり伝わったようです。
本人の実感があってこそ
打ち合わせが終わったあと、森くんは私のもとへ来て、少し申し訳なさそうに言いました。「前に言ってもらってた意味、やっと分かりました。あれ、失礼でしたよね」
その言葉を聞いて、私は正直ホッとしました。それ以降、森くんの言葉遣いは明らかに変わり、「承知しました」「ありがとうございます」と、場に合った返事をするようになりました。
私が指摘して届かなかったことも、本人が実感したことで初めて腑に落ちたのだと思います。そして、優しく、でもきちんと伝わる形で指摘してくれた取引先の方には、心の中でそっと感謝しました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

