義実家で過ごす年末年始
結婚して最初の年末年始。私は夫の匠(仮名)と一緒に義実家で過ごすことになりました。夫の親戚は仲が良く、毎年元旦には祖父宅へ親族全員が集まるのが恒例だと聞いています。初めての帰省で少し緊張していましたが、「みんな優しいから大丈夫だよ」という夫の言葉を信じて向かいました。
義母から渡された“紙袋”の正体
祖父宅の玄関に着いたとき、義母が紙袋を手に持って近づいてきました。「はいこれ、菜月ちゃんからってことにして渡してね」突然手渡され、私は一瞬状況が掴めませんでした。中身をのぞくと、きれいに包装されたパジャマが入っているようです。
義母は当然のように続けました。「おじいちゃんには毎年贈り物をするものなの。匠はあんまり知らないだろうけど、こういうのは女が用意するのよ」「菜月ちゃんは用意してないと思って、私が準備しておいたの。来年からはよろしくね」
私は(贈り物なんて、聞いてないよ〜……)と心の中でつぶやきながら、気まずい気持ちと戸惑いでいっぱいになりました。
初耳のイベントに困惑するも……
緊張しながら祖父へパジャマを渡すと、祖父はにっこり笑ってこう言いました。「贈り物なんかせんでいいよ。気持ちだけで十分や〜」その言葉を聞いたとき、私は驚きました。毎年の贈り物は祖父自身が望んでいたものではなかったのだと知ったからです。
横にいた義母は、気まずそうに「昔からの習慣だから……」と小さな声で言いました。その表情を見て私は、義母が“嫁の立場”になった頃からこうして受け継がれてきたことを、ただ次に渡していただけなのかもしれない……と気づきました。
義母の価値観が悪いわけではなく、世代ごとに自然と続いてきた文化だったのだと思います。そう考えると、最初に感じたモヤモヤは小さな理解に変わっていきました。
日頃の感謝は、夫婦に合ったスタイルで
年が明けて夫婦の自宅に戻ったあと、私は夫と「これからうちはどうする?」と話し合いました。ふたりで相談した結果、“無理のない範囲で、気持ちを込めた贈り物をする”というスタイルに落ち着きました。形にとらわれず、私たちに合うやり方で感謝を伝えていこうと思えたのです。
義母の言葉に一瞬戸惑ったけれど、贈り物そのものは決して悪い文化ではありません。今では、私たち夫婦にとっても「今年もよろしくお願いします」を伝える小さな習慣として、前向きに受け止められるようになりました。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2023年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

