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私の友人・詩穂さん(仮名)は、妊娠期から現在の育児まで「大変だなぁ」と感じることが多かったといいます。2人目の妊活など考える余裕がない詩穂さんに、後輩が言った何気ないひとこと。それ以降ずっとあった詩穂さんの心のモヤモヤは……?

大変だった初めての妊娠・出産

初めての妊娠・出産は、思っていた以上にしんどいものでした。悪阻は毎日つらく、出産も陣痛が始まってからなかなか進まず、最終的には緊急帝王切開に。やっと生まれてきた息子はとても可愛かったけれど、全然寝ないタイプで、産後は慢性的な睡眠不足でした。

職場復帰した今も夜泣きが続き、出勤した日は眠気と戦いながら過ごすこともありました。もちろん息子のことは大好きですが、“2人目”なんて、正直まったく考えられない状態です。

休憩中の何気ない質問

そんなある日。お昼休みに後輩の由美ちゃん(仮名)が、何気ない調子で聞いてきました。「2人目とかって考えてるんですか?」よくある会話の流れなので、私も深く考えずに答えました。「1人目のとき妊娠も出産も大変だったし、今もしんどいから、1人でもいいかなって思ってるよ」

すると由美ちゃんは笑顔のまま、「え〜! それかわいそうですよ!」「一人っ子ってわがままになりますよ〜!」と。その瞬間、胸の奥がチクッと痛みました。悪気がないのは分かっているし、昔からよく聞く“あるある”的な意見でもあります。だから「まあ、そういう意見もあるよね〜」と笑って受け流しましたが、心のどこかに小さなトゲのようなものが残りました。

まだ心に残る、少しのモヤモヤ

翌年、由美ちゃんは結婚。さらに数か月後に妊娠が分かり、産休へ入ることに。「おめでとう!」と心から祝福しながらも、私はふと、あのときの言葉を思い出しました。いまだに少しだけ引っかかっているけど、彼女に悪気があったわけでもないので、そのまま自分の中だけにそっとしまい込んでいました。

肩の力がふっと抜けたひとこと

ある日、由美ちゃんが赤ちゃんを連れて、久しぶりに職場へ顔を出しました。みんなで赤ちゃんを囲んで話していると、彼女がぽつりと「育児ってこんなに大変なんですね。ちっとも気が休まらなくて、他のことを考える余裕がなくて……」と言ったのです。

その言葉を聞いた瞬間、私は思いました。(ああ、きっと今、私と同じように子育ての大変さを実感しているんだな)“可哀想”と言われたときのあのモヤモヤは、自然と溶けていきました。

育児を含め、何事も経験して初めて分かることばかり。立場が変われば、今まで見えなかったものが見えてきます。だからこそ私は誰かに言葉をかけるとき、憶測だけで決めつけないように、傷つけるひとことにならないように気をつけようと、改めて思った出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

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