細かな服装規定のない職場
薬剤師の制服にはいろいろなパターンがありますが、私の職場で支給されているのは白衣のみ。上からサッと羽織るタイプで、中に着る私服に細かな規定はありません。
肌見せが定番スタイル
この夏に転職してきた村上さんは、肩出しスタイルや短いTシャツなど、ちょっと派手目な服装を好む女性でした。その露出の多さには、女性同士でも目のやり場に困ってしまうほど。
見かねた店長が注意をしますが「上から白衣を着るから暑いんですよね~! 白衣で隠れるし、患者さんに迷惑はかけていませんよ?」などと言って、聞く耳をもちません。実際、村上さんは薬剤師としての知識や判断力は抜群で、患者さんからも慕われていました。
ピンチヒッターによる在宅訪問
ある日、普段の担当者が急病となり、村上さんが在宅訪問へ向かうことになりました。私の勤める薬局での在宅訪問は、白衣は持っていかず私服で対応します。今日の彼女のファッションは、よりにもよって「へそ出し」スタイル。
「上着、貸そうか?」と聞いてみるも、村上さんは「大丈夫ですよ! 大事なのは服装じゃなくてお薬ですから~!」などと言いながら、意気揚々と出発していきました。
お薬以前の問題でした
1時間後。しょんぼりした顔で帰ってきた村上さん。訪問先の年配男性は、村上さんを見るなり「そんな浮ついた服装のヤツから薬の説明は受けん!」と叱り飛ばし、玄関で追い返されてしまったそうです。
結局、店長が時間を割いて訪問先へお届け & お詫びに行くことに。村上さんも後日、スーツ姿で謝罪に向かいました。
その後、この一件で懲りたのか、彼女はパンツにブラウスといった服装で仕事をするようになりました。普段のファッションは退勤後に楽しんでいるようです。
思いやりを大切に
オシャレやファッションは大事な自己表現のひとつ。しかし、そこには相手への思いやりが必要不可欠です。身だしなみの意味を、改めて考えさせられた出来事でした。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2024年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。

