20年以上続けてきた夕飯作り
仕事と家事を両立しながら、20年以上家族の夕飯を作ってきた私。料理は高校生の頃から好きで、結婚後もほぼ毎日欠かさず作ってきました。
家族は、夫・私・20歳の娘の3人暮らし。夫は普段から食へのこだわりが強く、気分によって“今日は〇〇が食べたい”という要求がコロコロ変わるタイプです。慣れているとはいえ、「今日も何か言われるかな……」という不安がいつも心のどこかにあります。
「え、今日これ?」夫のひと言で心が凍った
その日も仕事帰りに急いで買い物を済ませ、家族が好きな野菜の煮物と魚をメインに夕飯を作り、テーブルに料理を並べ、夫の帰宅を待っていました。
玄関から入ってきた夫は、靴も脱ぎきらないうちにテーブルを覗き込み、眉をしかめてこう言いました。「え、今日これ?」続けて、「俺、今日は肉の気分だったんだよね」ため息混じりのその一言に、胸がギュッと締めつけられました。「だったら事前に言ってよ……」と思いながらも、疲れていて言い返す力はありませんでした。
娘はじっと黙り込んだまま、冷めた目で父を見つめていました。
作った料理に一切手をつけず外へ
夫は私が作った料理を一口も口にせず、「今からスーパーで惣菜買ってくるわ!」とだけ言い残し、まるで“こんなの食べられない”とでも言うような態度で家を出ていきました。
空っぽになった玄関と、湯気の立つまま残された料理。私は怒りと虚しさで体が固まりました。横にいた娘が、小さな声でつぶやきました。「お母さんのご飯、めっちゃ美味しいのにね……」その言葉が嬉しい反面、涙がこぼれそうになりました。
実は夫はこれまでも何度か同じような“気分じゃない”発言を繰り返していて、娘は幼い頃からずっとそれを見てきました。20歳になった今、娘は完全に父の行動に引いている状態でした。
娘のひと言で夫が変わった
数日後の夕方、リビングにいると娘が真剣な表情で夫に向き合いました。「お父さん、お母さんに失礼すぎるよ。私、絶対お父さんみたいな旦那さん選ばないから。お母さんがかわいそうだよ」
その瞬間、夫の顔がみるみる曇り、しばらく黙り込みました。娘から言われたことで、ようやく自分の行動が家族を傷つけていたと気づいたようです。
その後、家族会議が開かれ、『夕飯のリクエストがあるときは朝までに伝える』『作ってもらった料理には必ず感謝の言葉を言う』『用意された料理を否定するような発言はしない』というルールが決められました。
私は娘に本当に救われました。今でも娘は父に対して距離を置いていますが、その距離感のおかげもあってか、夫の態度は少しずつ改善しています。長年抱えてきたモヤモヤが、娘のひと言でようやく動き出した気がしました。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

