送迎トラブルの発端
息子が所属している野球チームは、週末になると練習や試合があり、毎回送迎が必要です。近所の美希さん(仮名)のお子さんも同じチームで、いつもはご主人が車で送っていました。
ある日、「夫が仕事でどうしても車が必要で……」と困った様子で声をかけられ、私も“今回だけなら”と思って送迎を引き受けました。家も近いし、行き先は同じ。正直そこまで負担にも感じていませんでした。
頼まれごとが“習慣”になっていく
ところが翌週以降も、当たり前のように「今日お願いできる?」と連絡が来るようになりました。「旦那さん仕事?」と聞くと、「うん、まぁ……」と歯切れの悪い返事。頼まれる頻度が増えると、「今日もか」とため息が出ることも。
お礼も簡単な「ありがと〜」だけで、気遣いらしいものは特になし。最初は別にいいと思っていたはずなのに、少しずつ心の中にモヤモヤが溜まっていきました。
頼ってくるのは一方通行で、モヤモヤが限界に
ある週末、下の子の体調が悪く、送迎が難しそうな日がありました。そこで思い切って美希さんに「今週は送迎お願いできない?」と頼んでみたところ……「え? うちはちょっと困る! 車も狭いし」と、即答で断られてしまいました。
そのうえ当日には「今日の送迎どうする?」と追いメッセージ。「今日は無理」と伝えると、既読だけついて返事はありません。その瞬間、「なんで私だけが……?」という気持ちが一気に増しました。
夫に相談すると、「無理して関係を続けることはない。ちゃんと伝えていいと思うよ」と言ってくれて、ようやく背中を押された気持ちになりました。
距離を置いたことで見えた“許せるライン”
その日の夜、私は思い切って「これからの送迎は、各家庭でお願いしたいです」と丁寧にメッセージを送りました。返事は短く「わかったよ」だけ。
正直少し気まずかったですが、数日すると余計な連絡もなくなり、顔を合わせても挨拶程度の距離感に落ち着きました。週末の予定も立てやすくなり、あれほど感じていたストレスがすーっと消えていきました。
“良かれと思って”が習慣になると、気づかないうちに自分だけが負担を抱えることがあります。今では、頼まれごとをされたときには「自分が無理なくやれる範囲か?」と一度考えるようにしています。“優しさ”は相手との距離をきちんと守ることが大事なんだと気づきました。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

