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接客をしていると、どうしても理不尽な場面に出くわすことがあります。どれだけ丁寧に対応しても、思いがけない態度に心がすり減ることも少なくありません。今回は筆者の同僚が体験した、レジでの忘れられないエピソードを紹介します。

クセの強い常連客

私の働くドラッグストアには、午後4時になると必ず来店する中年女性がいます。どんな会話もすぐ喧嘩腰に変わってしまう方で、スタッフの間でも有名でした。

「なんでこの商品無いの?」事情を説明しても、「はぁ? 欲しい時に買えない店って無能じゃん」と容赦ない。値段を聞かれ答えると、「高すぎ。客をバカにしてんの?」と返される。どんなに丁寧に対応しても、言葉は荒く、気持ちが削られていくようでした。

心臓が高鳴るレジ対応

ある日、その女性が私のレジに向かってきました。粗相があってはならない。心臓がバクバクし、いつも以上に緊張しながらレジを進めました。商品をスキャンしながらも、女性は私を上から下まで鋭く観察してきます。

特に問題もなく会計まで進んだのですが……。「お会計は3,000円でございます」そう伝えた瞬間、女性は薄く笑ったかと思うと、財布から取りだしたお札を目の前でグシャッと握りしめたのです。そして、ぐちゃぐちゃになったお札を当然のように差し出してきました。

わざとなのか、それとも……

レジの自動釣銭機は、汚れていたり折り目の強い紙幣は受け付けません。詰まれば復旧作業が必要になり、後ろのお客様にも迷惑がかかります。「申し訳ございません。別の紙幣はお持ちですか?」丁寧にお願いすると、女性は眉を吊り上げました。「は? 何言ってんの? お金はお金でしょ!」予想通りの反応。

どうすればいいか迷っていたその時、「今、わざとグシャッってしたよね?」「大人なのに、やってること私らより子どもじゃん」「店員さん、かわいそう……」周囲にも聞こえるようなボリュームで、後ろに並んでいた女子高生グループが話し始めたのです。

救ってくれたのは女子高生たち

女子高生たちの言葉に、女性は一気に顔を赤くしました。そして何も言わず、新しい紙幣を出し、そそくさと店を出ていったのです。

女子高生たちは私に向かって笑いかけてくれました。「店員さん、大変ですね。でも私たち、ちゃんと見てましたから!」その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなりました。

小さな勇気が大きな支えになる

理不尽な状況でも、誰かが「おかしい」と声を上げてくれるだけで、こんなにも救われるものなのだと実感しました。

どれだけ丁寧に対応しても、話が通じない相手に出会うことはあります。そんな時、味方は思わぬ場所にいるもの。あの日の女子高生たちの勇気ある一言は、今でも私の心を支えてくれています。

【体験者:50代・女性パート、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

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