業種や職種によって繁忙期もさまざま。しかし共通しているのは“繁忙期は休みづらい”という点ではないでしょうか。もちろん有休は働く人の権利ではあるのですが、申請しづらいタイミングがあるのも事実。これは脱毛サロンに勤務する私が体験した、有休にまつわるエピソードです。
「どうしても休みたい」
ある日の昼休憩中、まじめな後輩が「今週の土曜日、どうしても休みたいんです」と相談に来ました。ちょうど繁忙期で、他のスタッフは誰も代われない状況。私も「今回は急だし厳しいかな」と返すしかありません。
そんな中、同僚が冗談まじりに「おじいちゃんのお葬式って言えば?」と提案。すると後輩は、真顔で「おじいちゃん2人とも元気ですし、もしその日に本当に事故に遭ったらと思うと、嘘でも言えません」と答えたのです。
嘘をつけない純粋な心
同僚が「じゃあペットが死んだとか? アレルギーで飼ってないって言ってたよね?」と続けると、後輩は「将来飼うかもしれないじゃないですか。その時のことを思うと、死を嘘にはできないです」と返答。
その純粋さに、私たちは胸を打たれました。すると、やり取りを聞いていた店長が「他店から応援要請できるか聞いてみるよ。〇〇(後輩)ちゃん、いつも頑張ってるもんね」と声をかけてくれたのです。結果、後輩は土曜の有休を取得することができました。
涙の出勤
ところが翌日、後輩は目を腫らして出勤。理由を聞くと、休みたかったのは彼氏がやっとその日なら会えると言ってきたから。有休が取れたことを伝えると、「そんな理由で仕事を休むな」と怒られ、別れ話に発展。結局、別れてしまったと涙ながらに語ってくれました。
初めての有休申請がこんな結末になるなんて、こちらまで胸が痛んだのを覚えています。その日の夜、少しでも元気づけたくて後輩を誘って焼肉へ行きました。
嘘をつかない強さ
今では上手に有休を使いこなし、素敵な恋人と幸せに過ごしている後輩。嘘をついて休むことは確かに良くない。でも、ここまで徹底して“嘘をつかない”ことにこだわる後輩の姿勢に、私は深く感動しました。
まっすぐな心は時に不器用だけれど、ちゃんと誰かに届くものなのだと、後輩から教えてもらったのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

