会えばよく話すママ友
娘のミミ(仮名)と同じクラスの男の子のママである百合さん(仮名)とは、毎日のお迎えの時間によく顔を合わせていました。いつも明るくて話しかけやすい人で、立ち話をするのが日課のようになっていました。
ある日、第二子が生まれたと聞いたので、お祝いの気持ちを込めてミミのお下がりを少し譲りました。小さくなった服や使わないおもちゃですが、百合さんがとても喜んでくれて、私もうれしかったのを覚えています。
だんだんと増えていく要求
ところが、その日を境に、百合さんの“お下がりトーク”がどんどん増えていきました。「これ、もうそろそろサイズアウトでしょ?」「着ないならちょうだい」と軽い調子で言われるようになり、最初は笑ってごまかしていた私も、だんだん困るようになりました。
「去年のアウター、今年も着る?」「サイズいくつ? もう小さいんじゃない?」など、まるでチェックされているような気分になることもありました。しかも、それを周りのママたちの前で言われるので、断りづらい雰囲気で……。「さすがにちょっと図々しくない?」と、心の中でモヤモヤが募っていきました。
ついに我慢の限界が……
そしてある日。「幼稚園の制服も、いらなくなったら教えてね!」と笑顔で言われ、思わず固まりました。私は苦笑いしながら「いや〜、制服は思い出になるし手放せないかも」とやんわり断ったのです。それでも百合さんは、「私だったら気にしないのに〜」と悪びれる様子もなく、少し場の空気がピリッとしました。
そのとき、たまたま近くにいた別のママが笑いながら「お下がりって、あげる人が決めるもんだもんね〜」とひとこと。百合さんはバツが悪そうに黙り込んでいます。私は正直助かったような気持ちになりました。
物のやり取りは、思いやりが大切
それ以降、百合さんから「ちょうだい」と言われることはなくなり、ほっとしました。私自身も断れなかったことを反省し、今では譲る相手も含めて慎重に考えるようになりました。
お下がりは、お互いの思いやりも大切で、気持ちよくやり取りできる相手じゃないといけない。そんなことを改めて感じた出来事です。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

