慣らし保育の矢先に起きた“想定外”
育休を終え、いよいよ職場復帰の時期を迎えました。ですが、慣らし保育が始まったばかりで、子どもはまだ新しい環境に慣れていません。
そんな矢先、まさかの発熱。熱はなかなか下がらず、復帰初日も登園できない状態でした。出勤を楽しみにしていたものの、どうしても家を空けることはできません。やむを得ず、課長にお休みの連絡を入れることにしました。
「社会人としてどうなの?」心に突き刺さる一言
電話越しに返ってきたのは、「社会人としてどうなの?」という冷たい一言。好きで休んでいるわけではないのに、まるで責められているような言葉でした。その瞬間、涙がこみ上げてきたのを覚えています。
私の会社は男性社員が多く、女性や子育てへの理解がまだまだ足りません。過去にも、結婚や出産をきっかけに辞めていった女性社員が少なくありませんでした。きっと、こうした何気ない一言が、誰かを追い詰めてきたのだと思います。
それでも私は、「すみません。でもどうしようもないので、お休みさせてください」と毅然と伝えました。
意外な変化と、見えないところでの“助け舟”
翌週、ようやく出勤初日を迎えました。正直、課長にどんな態度を取られるのか不安でいっぱいでした。ところが意外にも、「お子さんの体調はどう? 今日からまたよろしくね」と穏やかに声をかけてくれたのです。
一瞬、耳を疑いました。あの冷たい言葉を放った人と同じ人物とは思えませんでした。後から知ったのですが、年配の女性社員がフォローしてくれていたそうです。
私と課長の電話を聞いていたその女性が、「そんな言い方しかできないんですか? 奥さんやお子さんは熱も出さないんですか?」と強く指摘してくれたとのこと。
その一言に、どれほど救われたか分かりません。社内の人すべてが冷たいわけではない。理解してくれる人がいるだけで、心がふっと軽くなりました。
制度よりも大切な“人の意識”
この経験を通して痛感したのは、「制度よりも人の意識が大事」ということです。どれだけ制度が整っていても、そこに“思いやり”がなければ救われません。
あの日、子どもの熱と上司の言葉に心が折れそうになりました。けれど、誰かが声を上げてくれたことで、もう一度頑張ろうと思えたのです。
これからも、子育てと仕事を両立しながら、同じ立場の人を支えられる存在でありたい――そう思っています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

