知識自慢が止まらない山田さん
上司の山田さんは、常に「何でも知ってる」と主張する女性でした。患者さんの病気や健康法、最新の薬情報、テレビで見た医療ニュースまで、あらゆる知識を披露し、誰かが話すとすぐに「それなら私も知ってる」と割って入るのが日常。
同僚たちは「また始まった……」と感じながら苦笑い。仕事を進めつつ内心で小さくため息をつくこともしばしばでした。
患者対応の合間に炸裂する自己アピール
ある日、患者さんの会計時に山田さんは突然、「私、薬剤師さんより薬のこと詳しいかも!」と声高に宣言。同僚が「いや、薬の専門は薬剤師でプロだから……」とフォローすると、山田さんは一瞬眉をひそめ、「でも私も結構勉強してるんだから」と食い下がります。
調剤作業中も、薬の効能や副作用、患者さんの体調に関する知識を次々披露。患者さんが質問すると、自信満々に答えます。
それを見ていた同僚たちは、作業を止めずに薬のチェックや在庫整理を進め、患者対応を優先しつつ、山田さんを見守っていました。
自信が裏目に……山田さんの痛恨ミス
しかし別の日、患者さんが薬の飲み方について具体的に質問してきたとき、ついに山田さんの自信は裏目に出ました。「これはこうすればいいんですよ!」と断言したものの、内容は実際には誤り。近くにいた薬剤師さんがすぐに「いや、それは違います」と訂正すると、患者さんは一瞬戸惑い、山田さんは口元を軽く引き結び、眉がぴくりと動きます。
手元の薬袋を握り直し、「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせるように小声でつぶやき、視線を患者さんから逸らしてしまいました。言葉に詰まり、普段の自信満々な態度は影を潜め、場に少し気まずさが漂いました。
その後、結局山田さんは患者さんの質問には答えられず、その場を離れると、スッと調剤室の奥へと消えていきました。代わりに、薬剤師が対応にあたることに……。
小さな事件が生んだ大きな成長
この一件を経て、山田さんは以前のようなアピールを控え、患者対応や調剤作業により集中するようになりました。山田さん自身も、過信は時に裏目に出ること、そして周囲と協力することの大切さを、自然と学んだ様子でした。
こうして、薬局には以前より落ち着いた空気が戻り、日常のちょっとした出来事からも学びと成長が生まれることを実感したのでした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2016年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

