喜びの空気を凍らせる上司
上司の池田さんは、人の成功を素直に喜べないことで社内では有名でした。たとえば、チームがクライアントから高評価を受けても、池田さんはわずかに「ふーん……」とそっけなく返すだけ。
同僚たちは「もう少し喜んでほしいのに……」と苦笑いする日々が続き、チームの努力が軽く見られているようで、どこか物足りない雰囲気が漂っていました。
心の中のツッコミが止まらない瞬間
ある日、チームで担当した記事が市内の賞で表彰されることになりました。喜びに湧くチームをよそに、池田さんはすぐに近づいてきて、「でも俺のアドバイスがなかったら、そんなにうまくいかないよ」と、自分が中心人物かのように語り始めました。
チームのメンバーは微妙な笑みを浮かべるしかなく、心の中では「いや、池田さんほとんど何もしてないですけど……」と突っ込みを入れつつも、表情は作り笑いでやり過ごすしかありませんでした。その場の空気は、喜びと苦笑が入り混じった、ちょっと変な緊張感に包まれていました。
チームの力に敗北
数週間後、社内アンケートの結果が発表されました。「最も信頼できるメンバー」に、チーム全員の名前が並んでいたのです。その結果を知った池田さんの顔は真っ青になり、周囲も思わず息をのむほど。
「え、俺は? 俺は?」と慌てふためき、手元の書類を落としそうになりながら動揺する姿は、普段の威勢ある態度からは想像できないほどでした。その場にいたチームメンバーたちは、内心で思わず笑いをこらえながらも、胸の内でガッツポーズ。
笑顔に包まれた静かな勝利
「やっぱり、みんなで力を合わせる方が強いんだね!」そう心の中でつぶやきながら、チームの誰もが小さく笑いました。上司も、チームの信頼と笑顔の前には勝てなかったのです。あの日、オフィスにはほんの少しのスカッと感と、達成感に満ちた空気が静かに流れていました。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2023年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

