毎朝の恒例行事は「自慢タイム」
相澤さんは、毎朝出勤するなり開口一番「昨日は本当に大変だったのよ! あの患者さんの対応、私じゃないとできなかったんだから!」と話すのが日課。
同僚たちは「すごいですね」と返すものの、内心では「また始まった……」と苦笑い。ただ、相澤さんはその反応を「みんな私を頼りにしてる」と受け止めているようでした。
私がいないと……
ある日、上司がふと「相澤さん、今日の在庫管理ありがとう」と声をかけました。その瞬間、相澤さんの顔がパッと明るくなりました。「やっぱり私がいないとダメね」と小さくつぶやき、すぐに同僚の方を向いて「◯◯さん(上司)にも感謝されちゃった!」と報告。その様子からも、彼女が「薬局を支えているのは自分」と感じていると伝わってきました。
昼休みの主役
昼休みになると、相澤さんの「武勇伝タイム」が始まります。「この前の薬の発注ミス、私が全部チェックして防いだの! 危なかったわ~」と得意げに話しますが、実際に発注ミスを防いだのはシステム担当と他のスタッフの二重確認。
同僚たちは訂正する気にもなれず、「そうなんですね」と相づちを打ちながら、早く話が終わるのを待つばかりでした。
勘違いに沈黙
勤務が終わり、相澤さんは上機嫌で帰宅しようとしていました。すると上司から電話が。「相澤さん、この間の発注ミスは加藤さん(仮名)たちが気づいてくれたんだ。ありがとうって伝えておいてね」静まり返る相澤さん。やがて「……そうでしたか」とだけ答え、無言で帰路についたのでした。
その日の薬局は、静かな空気が戻りました。仕事はだれか一人だけでなく「みんなで支え合って成り立っていること」に気づいてもらえたら。そう思って、少しだけスカッとした瞬間でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2021年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

