春休みの東京旅行
小学生の春休み。祖母と弟と一緒に、東京へ1泊2日の旅行に出かけました。母は妊娠中だったため、家で留守番です。東京へは何度か行ったこともあったので、電車に乗るのも慣れたもの。
祖母に買ってもらったばかりの新しい財布をバッグに入れ、観光を思いきり楽しみました。
旅の時間はあっという間。新幹線での帰り道は、3時間ぐっすり眠ってしまいました。
なくなった大切な財布
家に帰ってから気づきました。財布がどこにもないのです。おこづかいだけでなく、東京で買ったお守りも入っています。
以前、地元で財布を盗まれた経験があったので、「今回もきっともう戻ってこない」と思い、落胆しました。そして何より買ってくれた祖母に申し訳なくて、胸が締めつけられます。
数か月後の連絡
そんな出来事も忘れかけていた数か月後、地元の図書館から電話がありました。「返却忘れの本があったのかも……」と焦ったのですが、「東京の交番から連絡があったんです。財布、落としませんでしたか?」とのこと。
驚いて事情を聞くと、財布の中に入っていた図書カードを手がかりに連絡をくれたのだとわかりました。
母に見守られながら東京の交番に電話すると、「春休みに落とされたんですね。こちらに届いたのはつい最近なんですよ。お金もsuicaも入った状態でしたよ」と警察の方。
それから書類を交わして、後日郵送してもらえることになりました。
戻ってきた財布に入っていたもの
数週間後、手元に戻った財布は、汚れもなくあの時のまま。お金もお守りも、全部そのまま入っていました。
ただひとつだけ違っていたのは、見覚えのない1枚のおみくじ。そこには「落とし物に注意。いずれ見つかるだろう」と書かれていたのです。偶然かもしれない。けれど、胸の奥が熱くなるような不思議な感覚を覚えました。
不思議な縁を信じる
財布と一緒に帰ってきたおみくじは、今も大切に取ってあります。もう無理だと思っていたものが戻ってきたこと、そして偶然のようで偶然とは思えないおみくじの言葉。
あの体験をきっかけに、「諦める前にできることをする」「巡り合わせを信じて感謝する」—―そんな姿勢を心がけるようになりました。
【体験者:20代・男性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

