調剤薬局の必須アイテム
調剤薬局の必須アイテムといえば、レセプトコンピューター。通称レセコン。処方せんの内容を入力すると、お薬代の計算を自動でやってくれる万能アイテムです。
ある朝、このレセコンが起動しないという大事件が起きました。
電源を入れても配線を確認しても、画面は真っ暗なまま。全く反応がありません。
慌てて業者に連絡しますが、電話越しのアドバイスでは解決せず。さらに、業者が直接来られるのは午後だと言われてしまいます。
それでも仕事は待ってくれない
開局時間まであと10分。門前の病院が開いているのに、薬局が臨時休業するわけにはいきません。サーッと血の気が引く思いでしたが、患者さんが待っているこの状況で、四の五の言ってはいられません。そこで私ともう一人の事務員は、腹を括りました。
「お薬代、手作業で計算します」
手作業での計算は新人時代に練習しただけで、実務経験はゼロ。それでもやるしかありません。点数表などの資料と電卓を片手に、処方せんとにらめっこ。
連携プレーで対応
スタッフ総出で患者さん一人一人に事情を説明し、お薬を入れる袋や領収証は手書き。説明書きの紙が出せない分は、薬剤師の服薬指導や手書きのメモでカバー。
お薬の準備には、普段の倍くらいの時間がかかってしまいましたが、患者さんたちが辛抱強く待ってくださったことが不幸中の幸いでした。
午前の外来をなんとか終えて、スタッフは全員ボロボロに。その後、業者によってレセコンは無事に復旧。不具合の原因は、前日に業者が行った定期メンテナンスによるものでした。
基本の大切さが身に染みた
何をするにも基本は大切。いざというとき「基本」が自分を助けてくれると、痛いほど身にしみた出来事でした。新人時代、基礎を叩きこんでくれた先輩にも感謝です。
でも、できることならもう二度と経験したくない……と思った、苦々しい体験でした。
【体験者:30代・筆者、回答時期:2020年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。
 
				
				

 
							 
							 
							