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これは、銀行に勤める筆者の友人から聞いたエピソードです。窓口にいると色々なお客様の対応を経験しますが、その中でも特に印象に残った人達がいました。長年働いているからこその「勘」によって巻き起こった、銀行ならではの出来事とその結末とは──?

独特な空気感をまとう二人

ある日、私が担当する窓口に、口座開設で大学生の男性と40代の男性が一緒にご来行されました。来行時からなんとも言えない独特な空気感を放っており、「友達でもなさそうだし、家族でもない。どんな関係だろう……」と気になったものの、いつもと変わらない自然な対応を続ける私。しかし、大学生が口座開設をする様子を、後ろの待合席で舐めまわすようにジロジロと見ている男性の様子に、ますます違和感を覚えたのです。

銀行員の「勘」

口座開設の理由を聞いても、大学生からの回答は「あ、いや、その……あの……」としどろもどろ。「どうしても0円では口座は作れませんか?」と開設用の入金もしぶり、キャッシュカードやその他サービスの案内も上の空といった様子です。悩んだり、困ったときは必ず同伴した40代の男性に質問をしに。

「やっぱり何か怪しい」と私の銀行員の「勘」がピンと働き、すぐに上司に相談しました。

「タダじゃおかねぇからな」と激怒

一連の出来事を聞いた上司も「やっぱり、何か怪しいね」と意見が一致し、口座開設のお手続きは丁重にお断りすることに。すると、40代の男性が「誰でも口座は作れんじゃねぇのかよ! こんなことしておいて、タダじゃおかねぇからな」と大声で激怒し、退店されました。あまりの声の大きさに私も周りもビクッと萎縮してしまいました。

「もしも、私の判断ミスのせいで後日大きなクレームになったら……」と不安な日々を過ごしていたある日。

ちょっとお話をうかがえますか?

「こんにちは。〇〇警察です。ちょっとお話をうかがえますか?」と、まさかの警察官が事情聴取でご来行! 実はあの後、近くにある別の銀行で口座開設され、振り込め詐欺口座として使われていたそうです。そして、犯人も逮捕したと教えてくれました。警察官から「口座が増えれば増えるほど、イタチごっこになるのです。あのとき、勇気を持って口座開設を断っていただきありがとうございます」と感謝され、ホッと一安心。

あのとき怖かったけれど、勇気を持って行動した自分に誇りをもてたエピソードです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。

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