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筆者の叔母が体験した、家族の心に深く刻まれたエピソードをご紹介します。父の闘病を支えながら複雑な気持ちを抱えていた真理子さん(仮名)。ある夜、夢に現れた父の言葉と笑顔。そして翌朝、現実とのつながりを感じさせる出来事が待っていました。

闘病を見守る日々と、複雑な気持ち

父は長い間病と闘い、入院生活を続けていました。医師からも「そう長くは持たないかもしれない」と言われ、家族も覚悟をせざるを得ない段階でした。苦しそうに呼吸をする父の姿を見るたびに、「もう楽にしてあげたい」という気持ちと、「まだ一緒にいてほしい」という気持ちが入り混じり、答えの出ない思いに揺れる毎日でした。

夢に現れた父の、笑顔とひとこと

そんなある夜、私は不思議な夢を見ました。病に苦しむ姿ではなく、元気だった頃の父が現れたのです。久しぶりに見る、背筋がすっと伸び顔色も明るい父は、私たち家族が忘れかけてしまっていた本来の姿。

そして笑顔で「やっと楽になるよ。ありがとう」とひとこと。あまりに鮮明で現実のような夢でした。その瞬間、父の姿が消えるとともに、私の身体にズンとした重みが走りました。なぜなのかは分かりませんが、直感的に「これは父が感じていた苦しみなのかもしれない」と悟り、「この苦しみから解放されるなら、よかった」と思えました。

翌朝に訪れた父との別れ

翌朝目が覚めたとき、私は「もしかしたら、今日がその日かもしれない」と感じました。落ち着かない気持ちで面会に行く支度をしていると、病院から電話が入りました。

「すぐに来てください」と告げられ、胸騒ぎを覚えながら病室へ。到着してほどなくして、父は静かに息を引き取りました。夢で笑っていた姿を思い出しながら、「きっと父は私に伝えに来てくれたのだろう」と心の中で確信したのです。

家族の心に残る“救い”

夢で見た父の言葉と、翌日に訪れた別れは偶然だったのか、それとも何かの予兆だったのか、今でも説明することはできません。ただ、病に苦しむ姿ではなく、元気な頃の笑顔で「ありがとう」と言ってくれたことが、残された家族の心を支えてくれているのは確かです。

父のことを思い出すたびに、悲しみと同時に不思議な安心感も湧き上がり、「あの夢は父からの最後の贈り物だったのかもしれない」と、今でも私の心をあたたかくしてくれます。

【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

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