注意はされたくないし、できればしたくもないものですよね。しかし、時にはその気持ちに折り合いをつけてしなくてはいけない時も。そんな時に現れた救世主とは……? これは保育士の友人が体験したエピソードです。
改善されない保護者
以前、私が勤めていた保育園に、何度同じことを注意しても改善してもらえないお母さんがいました。
持ち物には名前を書かず、着替えのストックも補充されません。園で貸し出した服も返却せず、禁止されているスカートやフード付きのパーカーを子どもに着せてきます。
何度伝えても全く変化がなく、私たち職員の悩みの種でした。
突然現れた女子高生
そんな折、そのお母さんが出産に入り、お迎えは義理のお母さんが担当するようになりました。
しかし、義理のお母さんに注意点を伝えても改善はされず、「私はよくわからないの」と返されるばかり。
ある日、お迎えの時間に派手な女子高生が現れました。最初は卒園児かな? と思いましたが、実はそのお母さんの親族。「代わりに迎えに来た」と言われたのですが、未成年なだけでなく事前に連絡がなかったことから、園の規則上引き渡せないと伝えました。
女子高生のド正論
その後、お母さんに電話を入れて、確かに親族であることを確認。しかし、未成年であることには変わりないため、保育園のルール上お迎えに来てもらう必要があると伝えました。
怒るお母さんを何度もお願いし、最終的には閉園間際にお迎えに来てくれました。数時間ほど待っていた女子高生と合流して、再び園にやってきたのです。
そこでまた「融通が利かない!」と怒りを爆発させるお母さん。しかし、隣にいた女子高生が冷静に一言。
「いやルールなんだから仕方なくね? 先生たちも困ってるじゃん。出産で大変とは思うけど、ルールはルールだよ」
彼女の正論に、お母さんは押し黙ります。
改善されたお母さん
私は「お体が大変な中申し訳ありません。ですが、お子さんの命を守るためのルールなんです。ちなみにお着替えのストックもルールのひとつでして……」と、これまでに改善されなかった決まりについても再度話しました。
すると、女子高生が「何? ほかにも守ってないルールあるの? おばさん大丈夫?」と加勢してくれたのです。何も言い返せず、お母さんは無言で子どもを引き取り帰宅しました。
翌日からは義理のお母さんがきちんとストックを補充し、規則外の服も一切なくなりました。
先生たちの言葉は聞き入れてもらえませんでしたが、女子高生の正論がお母さんを動かしてくれたのです。
以来、あの女子高生が来園することはありませんでしたが、職員全員が彼女に感謝しました。
時に、大人の言葉よりも若い世代の率直な声が人を変えるきっかけになるのだと感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。