距離感が近すぎるベテラン男性社員
金融関係の会社で働いていた友人には、ちょっと苦手な存在がいました。それは、社内でもそこそこ立場のあるベテラン男性社員。人当たりは悪くないものの、やたらとボディタッチが多めで、肩をポンと叩いたり腕をつかんできたりと、距離感がとにかく近いのです。
友人は「この人には近づかない方がいいな」と警戒心を持っていました。もちろん普通に会話はしますが、できるだけ物理的な距離をとり、背後には立たれないように気を配っていたといいます。
突然の接近に心臓バクバク
そんなある日、友人がデスクで資料を整理していると、背後に気配を感じました。振り返る間もなく、ベテラン男性社員がすぐ近くに立っていて、しかも手がお尻の方へと伸びてきたのです。
「やばい!これは触られる!」
「もう“触らないでください!”って言わなきゃ…」
心臓はバクバク。頭の中で警戒アラートが鳴り響いたといいます。普段から「この人には要注意」と思っていた友人は、席を立つときも背中を見せないように無意識に机を回り込むなど、かなり神経を使っていたそうです。それだけに、お尻に向かって伸びる手を見た瞬間は、時間がスローモーションのように感じられたといいます。「絶対触られる!」と頭の中で叫び、思わず身をこわばらせたとか。
意外すぎる
ところが次の瞬間、ベテラン男性社員が放った言葉は意外なものでした。
「糸くずついてるよ〜」
そう言うと、友人のスカートについていた小さな糸くずをスッと取っただけだったのです。触られはしなかったものの、距離感が近すぎるその行為に、友人はヒヤッとしたまましばらく固まってしまいました。
「いや、ありがたいけど…勝手にそんなに近づかれると怖い!」
思わず心の中でツッコミを入れたといいます。
笑い話になった“行きすぎた親切”
後日この話を同僚にすると「それは怖すぎる!」「いやいや、近づきすぎでしょ!」と想像以上の大笑い。場が一気に盛り上がり、本人もようやく笑える気持ちになれたと振り返っていました。
けれど同時に「人によっては“親切”が行きすぎて怖さに変わることもあるんだね」としみじみ語り合ったそうです。
友人にとっては心臓に悪い瞬間でしたが、最終的には笑い話に変わりました。ただ、今回の一件で「やっぱり距離感は大事。特に職場ではなおさらだ」と強く感じたといいます。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。