午前中指定の配達
知人は宅急便の配達員として日々走り回っています。
その日も、午前中指定の荷物を届ける仕事がありました。
午前中とは「12時まで」に届ければ問題なし。
午前中の配達は件数も多く時間との勝負になりますが、その日も順調に進み、11時30分にあるお宅へ荷物を届けることになりました。
時間内なので「大丈夫」と思っていたのですが、予想外の出来事が待っていたのです。
おばあちゃんの理不尽な怒り
チャイムを鳴らすと、出てきたのはおばあちゃん。
荷物を渡すやいなや、「遅い!もう待ちくたびれた!」と怒鳴られたのです。
その日は荷物が多く、午前中だけでも十数件を回っていた。時間との戦いで、常に走るように配達をしていた知人にとって、その言葉はあまりに理不尽でした。
知人は心の中で「午前中指定は12時までなんだから、11時30分なら十分範囲内なのに…」とモヤモヤ。けれど仕事柄、反論はできません。ぐっとこらえて「申し訳ありません」とだけ頭を下げました。もちろん仕事だから謝るのは当然だとわかっていました。
その瞬間、胸の奥がズンと重くなったそうです。必死に午前中に間に合わせようと走り回ってきたのに「遅い!」と突きつけられると、努力を否定されたようで心が折れそうになったと話していました。
孫の一言で空気が一変
その時、奥から小学生くらいの孫が出てきました。おばあちゃんの言動を見ていた孫は思い切ってこう言ったのです。
「おばあちゃん、恥ずかしいからやめて!テレビで見たことあるよ、そういうの良くないよ!」
一瞬で場の空気が変わりました。おばあちゃんはバツが悪そうに黙り込み、それ以上は何も言わなくなりました。
突然の孫の“正論”に、知人は救われた気持ちになったそうです。
救われた心と次への一歩
怒鳴られた直後は落ち込みそうになっていた知人でしたが、孫のひと言で心が軽くなりました。
最後はにっこり笑って「ありがとうございました」と挨拶し、次の配達先へと向かいました。
仕事をしていると理不尽なクレームに遭うこともありますが、思いがけない人物の一言に救われることもある。そんな体験談でした。
【体験者:30代・男性配達員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。