恋愛に熱中するのはとても素敵なことですが、時に自分自身を見失う可能性があります。「みんな心配しすぎ」と思ったり、「私は大丈夫」と信じ込んでしまったり。時には、その思い込みが自分を危険な場所へ連れていくことも。これは、私の大学時代の友人との忘れられない冬の日のお話です。
クリスマス前に始まった恋
大学生の頃、私と友人はクリスマス前に街コンへ出かけました。恋人探しに胸を躍らせる私たち。その場で友人は、好みの知的で優しい男性と出会い、交際が始まりました。
映画に行けばチケット代はもちろん、ドリンクやポップコーンも彼が買って支払ってくれる――うれしそうに話す友人を見て、私は心から祝福をしていました。
遠のいていく姿
しかし、季節が変わると彼女からの連絡も会う機会も激減。不思議に思って共通の友人に聞くと、「大学も休みがちで、登校しても授業が終わればすぐ帰宅をするし、サークルも全欠席」なのだとか……。
そしてようやく本人に会えたとき、明かされた事実に私たちは驚愕しました。実は、交際相手の男性は束縛がとても強く、スマホも常に監視し、彼女を軟禁同然の状態にしていたのです。
全く響かない説得
私や友人をはじめ、ご両親も必死に別れるよう説得をしましたが、彼女の心は全く動きません。表情は暗く不健康そうに見えるのに、「別れる気はない」と言い切る彼女。その姿には、強い洗脳のような支配を感じました。周囲の言葉は届かず、私の知っている友人の面影はなくなってしまったのです。
洗脳を解いたものとは
転機はある冬の日に訪れました。彼女から久々に連絡がきたのです。
「あの時はどうかしていた」と言う彼女。すぐに会う約束を取りつけ、事の顛末を聞きました。
なんと、彼女を解放したものは一枚の紙きれだったというのです。
一年ぶりに羽織った冬物のコートから出てきた映画の半券。それは、交際当初の優しかった彼がくれたもの。あの頃の思い出が一気に蘇ったのと同時に、今の現実との落差に気づき、彼女は我に返ったのです。
隙を見て実家へ避難。警察や家族の支えを受け、ようやく自由を取り戻しました。
彼女を救ったのは、友人の説得でも親の心配でもなく、一枚の映画の半券でした。支配から抜け出すには、本人が気づくことが大切なのかもしれません。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井 ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。