家族でお出かけ。向かったのは、噂のお化け屋敷
私が小学生の頃、家族で某遊園地へ出かけたときのことです。観覧車やジェットコースター、メリーゴーランドなどを思う存分楽しみ、笑顔いっぱいで園内を歩いていたとき、ふと目に入ったのが「本当に幽霊が出る」と噂されるお化け屋敷でした。
建物自体の雰囲気からして不気味で、最初はためらいましたが、噂への興味と行列に並ぶ人の多さを見て「せっかくだから挑戦してみよう」ということに。少し緊張しながらも、家族そろって笑顔で入場しました。
突然のハプニング! 弟が階段で転びそうに
そのお化け屋敷は、音響やおどかし役のキャストもいない、ただ薄暗い廃校を歩くというシンプルなもの。私と弟は怖がっていたものの、「なんだ、全然怖くないじゃないか」と笑う両親にしがみつきながらも順調に進んでいきました。
ところが中盤で、当時4歳だった弟が階段でバランスを崩し、転びそうになる場面がありました。幸いすぐに支えることができ、大きな怪我もなく無事に出口まで到着。家族はホッと胸を撫でおろし、「結局たいしたことなかったな」と笑い合ったのです。
「一番怖かったのは……」弟の口から出た意外な答え
他のアトラクションを目指し歩きながら、私は弟に「どこが一番怖かった?」と聞きました。すると弟は真剣な顔で「階段のところで、上から女の人が白い洋服を落としてきたとこ」と答えたのです。
私たち家族は顔を見合わせました。というのも、そのお化け屋敷には“白い服を落とす”ような仕掛けは存在しなかったからです。大人の目には、弟がただ自分で転びかけたようにしか見えていませんでした。
仕掛けにはない“白い影”が残した寒気
弟の言葉を聞いた瞬間、家族の間に不思議な空気が流れました。笑いながら「子どもの想像力だろう」と片付けようとしつつも、心のどこかでゾクリとする感覚を覚えたのです。
階段で転びそうになったことも偶然ではなかったのかもしれない……。そう思うと、ただの思い出話のはずが今でも少し背筋が寒くなる体験です。楽しい家族旅行の一幕でありながら、不思議な余韻を残す出来事となりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。