大好きな祖母に似ているお客様
定期的にご来店してくださる70代のお客様。お顔立ちも柔らかな雰囲気も大好きな私の祖母にそっくり、名前も祖母の名前とひと文字違いとあって、思わず親しみが湧きました。
私もつい自然と砕けた言葉遣いになってしまっていましたが、お客様も「孫と話しているみたいだわ」と喜んでくださるように。毎回ご指名をいただき、親族の相談やお客様の過去など、かなり深いお話をするようになっていきました。
突然の電話にスタッフ全員が感じるクレームの予感
ある日のこと。スタッフ全員でのミーティング中にそのお客様から電話が入り、受話器の一番近くにいた店長が電話を取りました。
ミーティングが中断しており静かな室内では、その場のスタッフ全員に電話越しのお客様の声が聞き取れます。室内に響き渡ったのはこんな声でした。
「いつも接客してくださる方、なんていうお名前かしら?」
私は砕けすぎた敬語、深入りしすぎた会話を悔やみ、お客様からのクレームだと確信。顔が青ざめ、後悔の念でいっぱいになりました。
勇気を出して電話を受け取ると
店長が「〇〇(私の名前)ですが、何かありましたでしょうか?」と応えると、「〇〇さんがいらっしゃるなら代わってくださる?」とご指名。店長から電話を代わるよう促され、恐る恐る受話器を握った私。
「すみませんでした!」
開口一番に謝ると、お客様からは意外な反応が。
「えっ、なんのこと?」
実はお客様、前回の接客時に私がおすすめしたラーメン屋さんの店名を忘れてしまい、それを尋ねたくて電話をくださったというのです。
拍子抜けする私。その場のスタッフ全員も、胸をなで下ろしました。
親しみと節度、その両立の大切さ
今でもお客様は毎月欠かさず通ってくださり、私を指名してくださいます。
祖母のように大切に思える存在ですが、あくまでお客様。今回の出来事を通して、心を込めつつも節度を忘れずに――そのバランスこそが、安心と信頼を長く育む秘訣だと気づいたのです。これからもその想いを胸に、お客様を迎えていきたいと思います。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井 ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。