しかし現場では、時に周囲の人の言動により、対応が複雑になる場面も少なくありません。今回は筆者本人が体験した、接客中の思わぬ割り込みに戸惑ったある日のエピソードを紹介します。
商品を探す常連のお客様
ある日、ドラッグストアで勤務中の私は、常連の年配女性から声をかけられました。いつもはお友達と来店されるのですが、この日は1人でいらしたようで、「ちょっと聞きたいんだけどね」と、商品の場所について質問されました。
ご希望の商品について話をうかがっていたその時、横から急に別の女性が割って入ってきたのです。年の頃は50代後半ほど。年配女性と一緒に来た様子だったので、おそらく付き添いの方なのでしょう。
その付き添いの中年女性は、年配女性が探している商品について「アレのことでしょ? テレビでやってた尿漏れパッド!」と言い出しました。さらには「この人が欲しいのは尿漏れパッドだよ。下着につけるやつ」と、周囲にも聞こえるような声で言い放ちます。
かみ合わない会話とかき乱される接客
しかし、私は少し違和感を覚えていました。年配女性の言葉はゆっくりながらも、会話はきちんと成り立っており、私に伝えてくれた商品は明らかにパッドではなく、”パッドを固定するための下着”だったのです。
付き添い女性がどんどん主導権を握っていく中、私は混乱を避けるため、もう一度ゆっくりと年配女性に尋ねました。
「お客様がお探しなのは、尿漏れパッドではなく、それをつけるための下着で間違いありませんか?」
すると、「うん。家にはパッドがあるの。今日はそれをつける下着を探しに来たのよ」と、はっきり答えてくれました。
第三者の強引さに困り果てていると
そのやり取りの最中も、付き添い女性は「違うでしょ、この人ずっとパッドが欲しいって言ってたのよ?」と譲りません。その時、どこからかもう1人の女性が近づいてきました。
見ると、普段から年配女性と一緒に来店されているお友達。「あら~? この前、それ買ったばかりでしょ? 今度は下着が欲しいって言ってたじゃない」と、友人女性が言うと、空気が一変。
付き添い女性は一瞬黙り込んだかと思うと、「だったら早く言いなさいよね!」と逆切れして、別の売り場へ足早に去っていきました。
向き合うべき相手を見失わない
私は友人女性にお礼を伝え、年配女性をご希望の売り場へ案内。すると、友人女性は笑いながらこう言ってくれました。「あの付き添いの人、せっかちで人の話を聞かないのよ。でもちゃんと本人と向き合ってくれてありがとうね」と。その言葉が胸にしみました。
お客様の代弁者のように振る舞う第三者がいても、私たち接客業が見るべきなのは、目の前で困っているご本人。その姿勢を忘れずにいたいと、改めて感じた出来事でした。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。