配達された荷物は別の店宛
私の働くドラッグストアには毎日のように大量の商品が届きます。中でも箱ティッシュなどの大型商品や販促物は、特定の配送業者が届けてくることが多いのです。
ある日、中年の男性ドライバーが持ってきた荷物をいつものように受け取りました。しかしどこか違和感。送り状を確認すると、うちの店舗宛ではありませんでした。
「違う店の荷物だよね……?」と同僚と顔を見合わせていたその時には、すでにドライバーは別の配達先へ向かってしまっていたようです。「どうする?」と困っていた私たちですが、送り状に配送会社の営業所の番号が書かれていたので、そちらに事情を説明する電話をかけました。
戻ってきた男性ドライバー
それから数時間後、そのドライバーが店に戻ってきました。私と同僚が出迎えると、開口一番――「困るんだよ!」怒鳴るような声。明らかに不機嫌そうな表情でこちらを睨みつけてきたのです。
「えっ……?」私たちは驚いて一瞬言葉を失いましたが「連絡先が書かれていたので、営業所にお電話させていただきました」と伝えると、男性はため息交じりに言いました。
「……あのさ、営業所に電話されると俺の評価が下がるんだよ。そんなことも分かんないのかよ!」
怒っているというより、ふてぶてしく、こちらを責めるような口ぶり。さらには、ポケットからクシャクシャになった紙を取り出して、こう続けたのです。
「これからはさ、何かあった時は俺に直接電話してよ。これ、俺直通だから」
渡されたのは、手書きの携帯番号が書かれた紙。私たちは戸惑いつつも受け取りましたが、内心はモヤモヤするばかりでした。
トラブルは初めてではなく……
実はこの男性、以前からトラブルが絶えませんでした。
過去には「これくらいなら売り物になるでしょ?」と破損した荷物をそのまま置いていったこともあれば、「えっ? 買い取りしなきゃダメなのか?」と開き直るような発言も。
誠実さや責任感がまるで感じられない態度に、スタッフ一同ずっと頭を悩ませていたのです。
突然姿を見せなくなった男性
そんな彼は、ある日を境にまったく店に現れなくなりました。私たちも「最近見ないね」と話題にしていたところ、スーパーで働く友人との会話で真相を知ることになります。
「うちのスーパーでも配送ミスや破損が多くてさ。態度も横柄だったし、店長がブチギレて出禁にしたらしいよ。もしかすると、配送スタッフから外されたのかもね」と。
思わず「やっぱり……」と納得してしまいました。
壊したのは荷物だけじゃなかった
荷物だけでなく、自分自身の評価までも壊してしまった男性。どんな仕事であっても、誠実さや責任感は必ず人に伝わります。評価を気にするのであれば、なおさらミスを正す姿勢や、周囲への配慮こそが必要だったのではないでしょうか。
目の前の仕事をどう扱うかは、そのまま自分自身をどう扱うかにも繋がっていくのだと、強く感じた出来事でした。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。