静かな夜にふと見えた光
私のスーパーでの勤務は基本的に日中のシフトが多かったのですが、その日は珍しく夜9時までの勤務でした。昼間とは違う、落ち着いた雰囲気の店内。何だかワクワクしながら作業していたのを覚えています。
夜になるとお客様も少なくなり、駐車場には数台の車が残るだけ。店の前は明るく照らされているものの、奥の方は街灯も届かず真っ暗で何も見えません。
ふと視線を奥に向けると、ゆらゆらと揺れている光が見えました。「えっ、何あれ……」
それは不安定に揺れながら、まるで人魂のようにぼんやりと輝いています。
呼び起された事故現場の記憶
実はこの店が建つ前、駐車場付近では交通事故で亡くなった人がいたそうです。光が見えたのは、その事故現場に近い場所。あまりに気味が悪くて、私は急いで同僚を呼びに行きました。
「ねぇ、あれ見て!」と戻ったときには、もうその光は消えていました。「気のせいなんじゃないの?」と同僚は笑いながらも、「あ、でも……見える人だったよね」と顔を曇らせます。そう、私は昔から“そういうもの”が見える体質。職場でもそのことは知られていました。
結局その日はビクビクしながら仕事を終え、帰り道に恐る恐る光が見えた辺りを通ったものの、異常は見当たりませんでした。
草むらに落ちていたピンク色の首輪
それから数日後の朝。いつものように出勤した私は、店の裏手の草むらにピンク色の首輪が落ちているのを目にしました。大きめの飾りがついていて、裏には「ちゃど君」と名前が。そして電話番号が書かれています。
猫の首輪だと気づいた私は、「飼い主さん、探してるかもしれない!」と思い、開店準備を済ませすぐに連絡しました。
安心した私に飼い主が一言
「○○店の者ですが、ちゃど君の飼い主様でしょうか?」と聞くと、男性が「はい、うちの子です」と。「首輪を見つけまして……。ちゃど君、ご無事ですか?」と尋ねると、「元気にしてますよ。何日か前に脱走しちゃって。多分その時に落としたんでしょう」と教えてくれました。
ホッとした私に男性は、「ちなみにその首輪、まだ光ってます?」と一言。よく見てみると、確かに薄っすらと光っています。その瞬間、頭に浮かんだのは“あの夜”の出来事でした。
謎の光の正体は――
お昼すぎに首輪を取りに来てくれた飼い主さん。「ちゃど、多分その晩ずっとこの辺で遊んでたんだと思います。ここの駐車場、縄張りにしてるっぽくて」と笑って話してくれました。あの日、私が見た“人魂のような光”の正体は――ちゃど君の光る首輪だったのです。
それ以来、首輪をつけて堂々と駐車場を歩くちゃど君をたびたび見かけるようになりました。声をかけたり名前を呼んだりするうちに、ちゃど君も私の顔を見ると寄ってきてくれるくらい仲良しに。
ちょっと怖かったけど、最後はなんだかホッとする出来事でした。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。