賑わう店内と、気になる子どもたち
ある土曜日、私はいつも通りドラッグストアで補充作業をしていました。その日の店内は混み合い、賑やかな雰囲気です。
ふと目に入ったのは、数人の中学生くらいの男の子たち。テンションが高く、ふざけ合いながら商品を見て回っています。実はその時期、店内での商品のいたずら被害が相次いでいたため、スタッフ同士で警戒しているところでした。
「ちょっと注意しておこう」私は他のスタッフにも共有し、意識しながら仕事を進めることにしました。
「やべぇ(笑)」という声、確認すると……
しかし、事件が起こります。
何か物音がした後、彼らが急ぎ足で店を飛び出していったのです。その直前には、「やべぇ(笑)」という男の子の声も聞こえました。私は「まさか……」と嫌な予感がして、さっき彼らがいた化粧品売り場へ。そこには、驚きの光景が広がっていました。
目にしたのは、床に散乱したアイライナーやピアス、販促用の陳列ボードの数々。
私は、商品に破損がないかを同僚と一緒に確認しながら「これはいたずらされたのかも」と思っていました。
防犯カメラで事実確認
商品に大きな傷はなく、幸いにも販売に問題はない状態でした。が、モヤモヤは残ります。
その後、出勤してきた店長に私から事情を説明。「ただ確信がないので、防犯カメラで確認させてください」とお願いしました。
私と店長、そして同僚のMで、防犯カメラの該当時間を巻き戻しながら確認を開始。画面には、男の子たちがふざけ合いながらも化粧水を手に取って選んでいる様子が映っていました。
次の瞬間でした。陳列棚にあった商品が、バラバラと一斉に床へ落下したのです。男の子たちは驚いたような表情を見せ、そのまま逃げるように立ち去っていきました。
偶然が巻き起こした“誤解”
「何が起きたの……?」私たちは今ひとつ状況が掴めず、再度映像を確認。すると、カメラの奥に大きく開いたバックヤードの扉が映っていました。
「そういえば。今日は風が強いから、何回か扉が勝手に開いてたね」とM。
そう、商品が散乱した原因は男の子たちではなく“風”。彼らは悪意あるいたずらをしたわけではなく、むしろ風で商品が散乱したことに驚いて逃げてしまっただけだったのです。
私は、思い込みで男の子たちを疑ってしまったことへの申し訳なさと罪悪感でいっぱいになりました。ただ、店長は「きちんと事実確認をしてくれてよかったよ」とフォローしてくれました。「証拠もないまま犯人だと決めつけてしまって、後から違ったなんてなれば大問題だからね」とも。
しかし、やはり反省点は反省点。それまでの経緯や所作でお客様を色眼鏡で見るのではなく、何事もしっかり確認しなければと痛感した出来事でした。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。