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職場での人間関係の悩みは、誰もが一度は経験するものです。とくに「悪気がない」や「たまたま」から始まるすれ違いは、小さな誤解が大きな溝を生むことも。今回は、筆者が調剤薬局で働いていた頃に起こった、人との距離感やコミュニケーションの難しさに直面したエピソードを紹介します。

起伏の激しい武藤さん

調剤薬局で働いていた頃の話です。事務員の武藤さん(仮名)は、機嫌が悪いとすぐに態度に表れるタイプで、感情の起伏が激しい人でした。周囲はその空気を読みながら接する必要があり、スタッフは日々、そんな武藤さんに気を遣いながら働いていました。

機嫌のスイッチは突然に

ある日、先輩事務員の吉岡さん(仮名)と仕事の確認をしていたところ、近くで武藤さんがキーボードをバチンバチンと異様な勢いで叩き始めました。明らかに普段とは違う音に、私たちはすぐに違和感を覚え、その場をそっと離れることにしました。

すると、武藤さんは私たちの周りを行ったり来たりし始め、「どうせ私はいないも同然」「話に入る資格もないし」などと、聞こえるような独り言をつぶやき始めました。やがて、怒りを爆発させるように扉をバンッと大きな音で閉め、そのまま帰ってしまいました。

その後、スタッフ全員が困惑状態。けれど誰も、その行動の理由をはっきりとは掴めず、なんとなく気まずい空気だけが残ってしまいました。

仕事の話をしていただけなのに……

翌日、武藤さんは何事もなかったかのように出勤。吉岡さんが「昨日どうしたんですか?」と声を掛けると、「お腹痛かったんで帰りました」と、まるで前日の出来事などなかったかのように、表情も口調も淡々としていました。

しかしその日のうちに、吉岡さんのもとに武藤さんからLINEが届きました。その内容は、「昨日、私が話に混ぜてもらえなかったことにすごくムカついて帰った。ずっと気にしてたのに、無視された気分だった」というものでした。

私たちにはまったくそんなつもりはなく、仕事上のやりとりをしていただけ。まさか、それが「自分だけ仲間はずれにされた」と受け取られていたとは、想像もしていませんでした。

思い込みが人間関係をこじらせるとき

「お腹が痛かった」は明らかに作り話で、武藤さんは話に入れてもらえなかったという勘違いから怒りを爆発させ、仕事を放り出して帰ってしまったのです。

正直、呆れる気持ちがなかったというと嘘になりますが、ほんの一言やちょっとした場面から、思い込みによって人間関係がこじれてしまうこともあります。だからこそ、相手の立場を想像して接することが大切なのかもしれない。そう考えさせられた出来事でした。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2021年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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