実は欲しい商品を把握していないお客様も多い
私の働くドラッグストアは病院が近いこともあり、午前中は病院帰りのご高齢のお客様が多いのです。自分が欲しいものを買いにきた方だけではなく、“知り合いに勧められた商品を買いにきた方”や“近所の人に頼まれて買いにきた方”もたくさんいらっしゃいます。
商品名を書いたメモを持ってきているならまだ助かるのですが、実際の商品を把握していない場合もあるので、そんなときは従業員が紐解いて商品を探していくしかありません。
クリームを買いにきた高齢女性
「クリームが欲しい」と私に声をかけてきた高齢女性は、近所の人との会話の中で知った商品を探しているようでした。「クリームですか。食べ物ですか? 食べ物以外ですか?」と聞くと、聞き取れなかったのか、「豆腐も買いにきた」と全然違う答えが……。
私はゆっくりハッキリと「何のクリーム?」と聞き返しました。「白いのだ!」と答えてくれたけれど、まだ分かりません。改めて「白いクリームは食べるもの?」という問いには「食べない」と教えてくれたので、だいぶ絞られてきました。
女性が欲しいクリームとは一体?
女性とのやり取りは続き、「どこに付けるクリーム?」という質問でさらに範囲を狭めようとすると、「風呂のときに使うのだそうだ。こんな入れ物だったなぁ。若くなる!」と言って、近くの売り場にあったチューブの練乳を指したのです。
「きっとボディクリームか美容クリームだろう」と思った私は、スキンケア売り場へ案内したのですが、それでも納得していない女性。「何に使うの?」と聞いてみると、「色を付けるのだ」との返答が。
女性の様子をもっと観察していれば……。
「もしかして、髪を染めるやつ?」と思い、髪染めコーナーに案内しました。いろんなパッケージの染髪クリームを紹介し、最終的に女性が選んだのは、チューブに入ったトリートメントタイプの髪染めでした。確かにお風呂のときに使うもの。しかも、思い返せば女性はしきりに頭を気にしていたのです。
もっと女性の様子を注意深く観察していれば、もう少し早くたどり着けたかもしれません。今後は、ヒントへの先入観を捨てて探さなければいけないと学んだ出来事でした。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。