私が航空会社で客室乗務員として勤務していた時に、個人的にはお客様のとある行動について「正直、ありがた迷惑かも……」と感じていました。もちろんお客様も善意で行ってくれていることですので、公然と「やめてくれ!」とは言えないのですが……。
食べ終わった機内食を回収する時にやめてほしいこと
私が航空会社でCAとして働いていた時に、お客様にご遠慮頂きたいなと思っていることがありました。それは「食べ終わった機内食のトレーをCAに返却する時、トレーの上にある小鉢を重ねること」です。
機内食のトレーはメインディッシュのお皿のほか副菜、デザートなど複数の小鉢がトレーの上に並べられています。大半のお客様が、CAが片付けやすいようにと気を使って小鉢を重ねてくださっていました。ただ、個人的にはそれらの小鉢を重ねず、配膳された時と同じように平たく並べた状態で返して頂けると大変ありがたいな……と感じていたのです。
どうして機内食の小鉢を重ねられると困るの?
お客様から機内食のトレーを回収すると、CAはトレーをカートの中に収納しなければいけません。
カート内の収納スペースは限られているため、小鉢が重ねられているとかさばってしまい、カートの中にトレーが収納しきれなくなってしまいます。そのため、小鉢が重ねられた状態で返却されると、配膳された時のように平たい状態に戻さなければならないのです。
機内食を回収する時もCAは大忙し!
お客様からしてみると、CAはただ機内食のトレーを回収しているだけで、そんなに大変なの? と思われるでしょう。
しかし、実は機内食を回収する時にも同時進行でたくさんの事を行なっています。食後のコーヒーや紅茶を用意したり、途中でおかわりのお酒やジュースのリクエストを受けたり、機内食を配る時に寝ていたお客様が起きると、追加でごはんを温めたり……。
また、通路にカートが出ている時にお手洗いに行きたいお客様がいると、いったんギャレー(飛行機内のキッチン)に戻らなければいけません。などなど、トレーの回収は思ったよりもスムーズに進まないのが実情です。
退職し、機内食を受け取る立場になって
そんな慌ただしい中でも、忙しさを表に出さずに優雅に見せるのが客室乗務員の仕事。内心「小鉢もまた平たく戻さないと……!」と思いつつ、お客様には笑顔で接して働いていました。
退職した今、現場の対応は変わっているかもしれませんし、航空各社でも実態は異なるかもしれません。ただ、私自身が搭乗客として機内食を提供された時に、「このCAさんも苦労してるのかな……」と当時のことを思い出すのでした。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:阿川香織
日系航空会社で国際線・国内線の客室乗務員として勤務。現在は退職し、乗務員時代に得た知識や出会ったお客など、女性ならではの視点でコラムを執筆。子育てに奮闘しながら、女性を言葉で元気づけたいと精力的に情報発信をおこなう。