豪華ゲストの登場や元祖スーパーモデルのカムバック、SNSをバズらせるようなコラボレーションなど、毎回ゲストにサプライズを与えてくれる世界4大ファッションウィーク。ここでは、昨年9〜10月にかけて行われたファッションウィークで発表された2024年春夏コレクションの中で印象深いランウェイをピックアップしてお届けします。今回は、毎回ユニークな仕掛けで注目を集めるイタリアの新鋭ブランド「エーヴィエーヴィエーヴィ(AVAVAV)」。

コンセプトは「デザインする時間も、説明する時間もない」

スウェーデン出身のビート・カールソン(Beate Karlsson)がクリエイティブ・ディレクターを務める「エーヴィエーヴィエーヴィ」は、これまでもステージ上でモデルが転倒したり、服が分解されたりと、たっぷりなユーモアとブラックジョークを交えた大胆な演出で、毎シーズンSNS上で話題を呼んでいるブランドです。2024春夏コレクションでも招待客の期待を裏切らない演出が話題に。

スタッフが「AVAVAV」と書かれた付箋を慌てた様子で壁に貼り付けるところからショーがスタート。と、思いきや最初のモデルはランウェイを3歩歩いたところでバックステージへ引き返してしまったのです。もちろん演出なのですが、突飛押しもないこの事態に招待客からは思わず笑いと驚きの声が。

4ルック目には、今回のコンセプトである「デザインする時間も、説明する時間もない」をより強く主張するかのように「NO TIME TO DESIGN」と書かれたフーディを着用したモデルが登場し、靴底に紙切れが付着したままのルックで足早にランウェイを去っていきました。

その後、男性モデルが上半身に何も身につけず出てきたと思ったら、スタッフからシャツを投げられ着替えながらランウェイを闊歩。12ルック目には、服を着る時間がなく、ハンドブラ状態でキャットウォークするモデルの演出も印象的でした。その他にも靴を履き忘れたモデル、ランウェイをダッシュで駆け抜けるモデルの姿に会場もなんだか忙しない雰囲気に。

ショーの後半に登場した、ポストイットを張り詰めた黄色のスーツルックや、ガムテープでぐるぐる巻きにされ、裾にガムテープが残されたドレスルックも、大量の業務に終われる目まぐるしい日常の中での「ストレス」と「プレッシャー」を表現しているように思えます。またアイメイクは、過酷な労働で涙でマスカラが滲んだ泣き顔を演出しているのだとか。

ファッションを通して現代社会における「ストレス」や「プレッシャー」を表現

今回のランウェイの背景には、現代のファッション業界の過酷な労働環境、それに伴う日々の「ストレス」や「プレッシャー」に苛まれる様子を皮肉たっぷりなブラックジョークで演出するという現代社会への問題提起があったのかもしれません。ネット上では「素晴らしい」、「世の中の問題提起をファッションで表現しているのが面白い!」などと称賛する声がある一方で、もちろん非難の声も上がりSNS上で賛否がわかれています。これも含めすべてビート・カールソンの戦略とは言え、今後のコレクションからも目が離せないのは確かです。

Senior Writer:H_aco