Paris RE Madeファウンダーでデザイナーのトゥさん(画像提供:Paris RE Made)。
Paris RE Madeのはじまり
オランダ育ちのトゥさんは約20年前に渡仏して以来、パリでハイエンドなファッション業界に携わっていました。数年前に、知り合いからの提案でアップサイクルブランド「ParisRE Made」をローンチすることになったといいます。
トゥさん:私はもともとクチュールのブランドを持っていて、そのときからデットストックの素材を積極的に使用したり、環境負荷の低減を意識したものづくりをしていました。当時はサスティナブルという概念が一般的には知れ渡っていなかったので、私のアプローチについてわざわざ語る機会もありませんでした。Paris RE Madeは私がかねてから好んで取り組んでいたことをカタチにしたもの。サスティナブルな生産のために、ヴィンテージの古着や素材を使った、アップサイクルのピースを作ることに注力しています。
Paris RE Madeのコレクションピース(画像提供:Paris RE Made)。バーバリーの大きなシャツを組み合わせ、軽やかなドレスに仕立て直したものです。フロントにはウエストギャザーを入れ、立体的な構造に。
共鳴してくれる人に届けたい
トゥさんがデザインをするときのモットーは「自分のデザインを信じること」と「着てくれる人のそばに長くいられるピースを作ること」。ParisRE Madeの信念に共感する人々が増えつつあるなか、「アップサイクルデザインは楽しいけれど、チャレンジングなことでもある」とトゥさんは語ります。
トゥさん:みんなが異なる方法で自分らしさを表現しますから、世界中の人々がサスティナブルを実践することは不可能であると理解しています。私の娘もすぐに新しいものが欲しくなる年頃ですし。それぞれの考え方があるし、それぞれが自分の欲しいものを選択することが大切だと思います。
トゥさん:アップサイクルは作業工程が多く、時間がかかります。それにParisRE Madeではシャネル、イヴ・サン・ローラン(現サンローラン)、ラルフ・ローレンのように何十年経ってもクオリティの高い、ハイエンドなヴィンテージを使用するので、制作コストも格安というわけにはいきません。だからこそ、サスティナブルやスローファッションに興味があり、そのうえでParisRE Madeをよいと思ってくれる人がいると、とても嬉しいですね。
リーバイスのヴィンテージデニムをいくつも組み合わせて再構築した、デニムドレス(画像提供:Paris RE Made)。胸元のボタンやウエストベルトを調整することで、さまざまな人々の体型にフィットします
消費するかわりに、目的を与える
Paris RE Madeでは多くのピースがシーズンレス。季節に左右されずに長い期間着用できるため、ファッションの消費を抑えることができます。
トゥさん:それが商業的な発想ではないということはわかっているのです。結局のところ、すべての産業の目的は「売上を出すこと」ですからね。ただ、アプローチの方法を意識することでよりエシカルにできると思うのです。私たちが扱っているヴィンテージの素材はクオリティが良いものだから、新しい使い道を生み出してデザインを再構築すると、これからもずっと着られるものになります。消費するかわりに、目的を与えるのです。
ジレとブレザージャケットが組み合わさったトップとスカートのセットアップ(画像提供:Paris RE Made)。伝統的にはマスキュリンなアイテムをフェミニンな印象で着こなすことができる、Paris RE Madeのシグネチャールックのひとつ。
ユニークであるということ
トゥさん:私たちが扱っている素材の特性上、全く同じものをいくつも作ることはできません。たまにバイヤーの方に「全く同じアイテムが複数欲しい」と言われ、私たちのコンセプトを理解してもらうことは難しいと気が付かされます。例え話ですが、トマトやきゅうりを買うときにそれぞれの個体に違いがあることはみんな理解しているし、それが大きな問題になることはないですよね。Paris RE Madeのピースも世界に一つしか存在しない、唯一無二のもの。「絶対に同じものを作ることはできない」ことはアップサイクルの魅力のひとつでもあるのです。
ブランド情報
Paris RE Made
Website:https://parisremade.fr/
Instagram: https://www.instagram.com/parisremade/
Senior Writer:Yuko.K