今の時代には珍しくなってきた社員旅行。温泉や宴会が定番だと思っていた私が、公認会計士事務所で目にした旅の内容は、想像を絶する衝撃的な内容でした。カルチャーショックを受けた、旅の模様をご紹介します。

道中は手ぶらが鉄則

私が公認会計士事務所に入って初めての社員旅行は、クリスマス前の軽井沢。3泊4日のリゾートホテル滞在で、所長夫妻は別荘探しを兼ね、私たち事務員は美味しい食事とショッピングが目的でした。

当日、新幹線のホームに現れた所長夫妻は、小さなハンドバッグを手に優雅な出で立ち。荷物は宅配便で送ってあると聞き、「さすがセレブは段取りが違う」と感心したものの、この時はまだその真の理由を知りませんでした。

スイートルームは自宅のリビング!?

ホテルに到着後、各自の客室へ。1時間後に所長夫妻のスイートルームに集合と言われ、部屋に入った瞬間、思わず息をのみました。

そこにはクリスマスツリーやリース、ペットホテルに預けてきた愛犬の写真が飾られており、さらに愛用の加湿器や電気ケトル、アロマディフューザーまでフル装備。
ホテルの客室が、まさに「自宅のリビング」状態に様変わりしていたのです。確かにこれは手荷物では運べない……と納得です。

夜ごとのドレスアップと驚愕の過去

滞在中、所長夫妻は当然のように毎日衣装を替え、ディナーではドレスアップ。優雅なリゾートライフを満喫されていました。
ベテランスタッフのA子さんに「所長夫妻はいつもあんなに荷物が多いんですか? 」と尋ねると、彼女は笑いながら「今回はまだ少ない方よ。以前は巨大な熊のぬいぐるみを持って来たこともあったの」と教えてくれました。

旅行にはできるだけ荷物を減らして身軽に出かけたい私にとって、その発想はまさに別世界。旅行に対する価値観の違いに、驚くばかりでした。

最後に飛び出した仰天発言

チェックアウトの朝、奥様が真顔で「このホテル、収納が少なかったわね」と一言。その瞬間、事務員全員が心の中で「収納が少ないんじゃなくて、荷物が多すぎるんです! 」と一斉にツッコミを入れました。

それまで、旅先では「非日常を楽しむもの」だと思っていましたが、所長夫妻のように自分にとっての「快適な日常」を徹底的に追求するのも一つのスタイルなのだと知りました。
到底真似はできませんが、今でも軽井沢を訪れるたび、あの煌めくクリスマスツリーとご夫妻を思い出して、思わずクスッと笑みがこぼれます。

【体験者:60代・会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。