これは私の実体験です。人は、出会いと経験を積み重ねて成長していくもの。新卒で入社した会社での勤務地について、「配属ガチャ大外れ!」と思っていたのですが、実際には予想もしていない未来が待っていました。

都会の真ん中でバリバリ働くぞ! と意気込んだものの……

大学を卒業し、新卒で入社したのは誰もが知る大企業でした。自分でも胸を張れるくらいに頑張った就職活動で勝ち取った憧れの会社。「東京の真ん中でバリバリ働いていずれ海外出張も行って、スキルアップするぞ!」 とバリキャリを目指し意気込んでいました。しかし、予想に反して最初に配属されたのは、都内から電車で1時間半はかかるとある県の支店。都心のビル街から一転、広大な田畑や古い商店街に囲まれたエリアでした。

営業担当として必死に仕事を覚える日々

営業担当として、取引先企業との商談や接待ゴルフなど、いかにも「営業らしい」生活のスタートです。早く一人前になれるよう、先輩や上司から教わったことを必死に吸収する日々。帰宅後も業界知識や商品情報を勉強。少しでも客先の役に立てるよう、必死に準備を重ねました。しかし、意外にも一番手こずったのは、仕事そのものではなく、取引先との人間関係だったのです。

キャラの濃い取引先の重鎮たち

中でも印象的だったのは、取引先ごとの個性的な面々。A社の専務(72歳女性)は、訪問するたびに「ちょっと犬の散歩お願いね」と愛犬を託してきます。犬アレルギー持ちの私は毎回マスクの下で苦笑い。B社の会長(75歳女性)は、毎週金曜のお昼に「今週もカレー食べて行きなさい!」と目を見張る量の大盛りカレーを振る舞ってくれます。そしてC社の社長(65歳男性)は家庭菜園が趣味で、「今週はトマト持って帰りな!」「今日はサツマイモ!」と、袋いっぱいの野菜を毎週のように持たせてくれ、スーツ姿で大量の野菜を抱えながら他社との商談に向かったことも何度もありました。

犬の散歩で勝ち取った信頼

最初は先輩からも「そんなことまでさせられてるの!?」と驚かれ、私自身も、想像していた“仕事の大変さ”とは違う日々に戸惑いました。けれど、その経験を通じて、会社は単に働く場ではなく人生経験を積む場所だと学ぶことができました。犬の散歩も大食いも野菜運びも全力でこなした結果、個性的な重鎮たちからの信頼を得ることができ、仕事はスムーズに進み、2年目には成績は部内トップに。都内でキャリアを積んでいた同期にも羨ましがられるような経験ができました。当初は配属ガチャ大外れだと思っていましたが、振り返れば大当たりでした。退職した今でも、たまにカレーを食べに行っています。

【体験者:20代・会社員女性、回答時期:2014年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。