ファッションの世界で頑張る女性をクローズアップし、その活躍や軌跡を辿っていく連載企画。今回は株式会社シップス発の新ブランド【quaranciel】ディレクターの中川三枝子さんにインタビュー。【SHIPS】の看板をあえて外した新ブランドへのチャレンジの裏には、さまざまな想いがありました。立ち上げから1年経った今、ブランド誕生からこれまでの成長、さらにこれからへの想いを語ってもらいました。

新卒からアパレル一筋!MDを経て【SHIPS】へ

新卒から現在までアパレルに携わっている中川さん。販売員として2年ほど働いたのち、店舗運営や商品提案をするポジションになり、会社を移ってMD(マーチャンダイザー)へと転身。その後【株式会社シップス】へ入社します。

「【株式会社シップス】には【SHIPS any】の立ち上げとともに入社をしました。今は【SHIPS any】と【quaranciel】のディレクションをやっております。【quaranciel】はコロナ禍を経てお客様がネットでの買い物にポジティブになっているタイミングに、40代の働く女性の人生がさらに豊かになるよう、そしてECの強化という意味でブランドを立ち上げました」

【SHIPS】も40代がターゲットである中で、【quaranciel】もなぜ40代の働く女性をターゲットにしたのでしょうか。また、【SHIPS】の看板をあえて外してブランドにチャレンジした理由とは?

「40代の女性は仕事もプライベートもすごく忙しいので、時間のない時でも簡単に情報収集ができるツールとしてECを選びました。また、【SHIPS】の次ステージ、新たな価値を広げる試みとして、あえて新ブランドとして立ち上げることにしました。看板はありませんが、【SHIPS】のDNAを引き継いでいます」

ブランドコンセプトに込められた願い

【quaranciel】が立ち上がったのは2023年の秋。ブランドにはどんな思いが込められているのでしょうか。

出典:quaranciel公式サイト
www.shipsltd.co.jp

「ターゲットが40代ということで、フランス語で40という意味の『カラント』、空という意味の『シエル』を掛け合わせた造語です。ブランドコンセプトは『BASIC TO CHIC』で、CHICはフランス語で上品、洗練されたという意味なんですけども、英語で言うとsmart、stylish。【SHIPS】の『STYRISH STANDARD』という概念にも通じています」

即完売することも!人気アイテムをご紹介

ローンチから1年経ち、ヒット商品も生まれるなど好調な【quaranciel】。人気アイテムは入荷後即完売してしまうこともあるほど。そんななか特に今売れているアイテムを教えてもらいました。

「ブランド自体がエレガンスも掲げているのですが、【quaranciel】は甘さに寄りすぎない『ハンサムフェミニン』のイメージを大事にしています。なので、女性のかっこよさを強調するようなブレザーや、ワイドパンツなどがすごく人気です」

(写真左)
ケープのような衿と滑らかな肌触りが特徴のリバーケープコート。見た目よりも軽く、さっと羽織れるのに空気を含んだような暖かさが生まれます。シルエットの綺麗さも見逃せないポイント。¥17,930

(写真中)
ローンチから大人気のハイウエストワイドパンツ。楽に着れるのに、トラッド要素が入っているのでキレイ見え。ハイウエストなのでお腹周りもスッキリ見えます。毎シーズン色展開や素材を変えて出すほどのヒットアイテム。¥14,300

(写真右)
定番人気なのがジャケット・ブレザー類。見えないところにも本格的なメンズ仕様を入れるなど、随所にこだわっています。最近はジャージー素材のジャケットが、柔らかく動きやすいと好評なのだとか。¥15,950

今年特に売れているのがポンチ素材のシリーズ。中川さんも愛用しているこちらのコンパクトスウェットはハリと膨らみがあり、構築的なフォルムが出るので大人もさらっと着こなせます。¥7,920

価格帯、素材…職人気質なモノ作り

数々のヒット商品を生み出す背景には、「こだわった素材と本格的な仕様を手に取りやすい価格帯で展開している」という、一番のこだわりがありました。

出典:quaranciel公式サイト
www.shipsltd.co.jp

「服の価格帯って色々あると思うんですけども、お客様のもとへ届いたときに『この値段でこんなに価値があるんだ』と感動して、リピーターになっていただくことで売れ筋ができているので、1年間でそこを積み上げられたかなと思います」

【quaranciel】の商品を見ていると、今のDtoCによくある映えるものや有名人コラボなどの華やかな露出ではなく、しっかりと作り込み、実直で職人気質なモノづくりの姿勢が見えます。ECで手に取れないからこその細かいこだわりが、ブランドの信頼感へとつながっているのです。

「私が作り込んでしまうタイプなのと、モノ作りにこだわってるチームなので、それが商品の価値を高めていると思っています。さらに絶対になくしちゃいけないのが、コンセプトにもある『上品さと洗練』というところ。もちろんトレンドも入れていきますが、あくまでも品があるように入れるなど、工夫しています」

服を買う=気分が上がるツールであってほしい

今の消費者の方々が求めてることは、いいものだけど【quaranciel】のようにある程度ライトタッチであるということ。それは中川さんのモノ作りの1つの答えにもなっています。

「高価なものも作ってきたし、インポートが流行った時代もありましたが、今は着たいなと思ってすぐ買えるものの方がよりファッションを楽しめるんじゃないかと思うんです。服って、頑張って買うより気分を上げるようなツールであってほしいなと」

気軽に上品なスタイルが楽しめる裏には、価格設定にもこだわりが。あえて高価でも、とにかくチープなわけでもない中間的なところを取っているのにも理由がありました。

出典:SHIPS公式サイト
www.shipsltd.co.jp

「ある程度年齢を重ねてくると、いろんな服を着て成功も失敗もして、モノの価値もだんだんわかってくると思うので、その世代の方にちゃんとしたものを提供したい思いからの価格設定です。40代とかになると、逆に『安すぎると怖い』って思うんですよ。一生使おうまでは気負ってないけれど、何シーズンかは楽しみたいし、ちょっと着て終わるものにはしたくないですね」

「いいものを適正価格で」。ターゲットとする世代が納得感を持って買えるモノ作りこそ、中川さんが形にしたかったこと。さらに、【quaranciel】のアイテムを見ると扱いが難しい上物衣料やニットでも洗濯ができたりと、扱いやすい素材が多く使われていることに気がつきます。

「いくらお値ごろでも、扱いにくいとファッションが楽しめないですよね。今は素材も進化して機能素材も増えているので、それを使ったブランディングを強みにしていきたいです。そこはブレないように社内のチームでも連携しています」

チームが同じ方向を向き、連携して作り上げる

いいモノづくりができるのも、チームがみんな同じ方向を向いているから。目指している場所が一緒だと、ブレないものが出来上がる好例です。

「【SHIPS】に入社してから、メンバーに恵まれているなと思います。私は結構アイデアを出すのが得意なんですけども、1人で実現していくのは無理なので、それを拾って咀嚼して消化してくれてるメンバーがいる。それに助けられていますね」

アイデアを出すのが得意と語る中川さん。いいものを作るために、日々どんなアンテナを張り、吸収しているのでしょうか。

「やっぱり、自分が考えたものが売れると楽しいですよね。それが今のディレクションにも活きていて、商品計画を立てるにあたってSNSや街などの市場をよく観察・分析しています。普段から、街で流行ってることが気になってしょうがないです。簡単に言うとミーハーなんでしょうね」

ブランドがこれからもっと成長していくために、努力されてることやこれから目指してるものをお伺いすると、「もう少し露出を増やして、同時にファンも増やしていきたいなと思っています。みんなが愛を込めて作ってるクリエイションを、もっと皆さんに見ていただきたいですね」

quaranciel公式サイト

SHIPS公式サイト(quarancielオンラインストア)

quaranciel公式Instagram

https://www.instagram.com/quaranciel_official/

Photograph/ASAKO HOSHI
Text/石井真奈美