ボディポジティブ・プラスサイズモデルがトレンドになって、世界で大きめサイズのモデルたちが活躍する時代。日本でその文化を切り開いたひとりが、モデル・編集者の安藤うぃさんです。細身=美という価値観を変え、プラスサイズモデルが活躍する雑誌とファッションシーンを日本で作ってきました。そして今ブームを超えて次のシーンへと進む彼女に、社会の意識が変わるまでの道のり、そしてこれからのプランを聞きました。
画像1: ボディポジティブのパイオニアはいま――【安藤うぃ】さんが語る「プラスサイズ女性の無限の可能性」

コンプレックスを抱えていた10代と
la farfaモデルになってからの葛藤

「私は子どもの頃から割と大きくて、ご飯もよく食べる子だったんですけど、まわりの子は痩せてるのに私だけサイズが違ってお揃いの服が着られないということがあって。それから『着たい服を着るためには痩せなきゃ』って思い込んで、思春期はダイエットばかりして、自信がない子でした。母がアパレル関係の仕事をしていたのでおしゃれに関心はあったけれど『お母さんは服を自由に選べるのに、私はそうじゃないんだ……』という感覚がずっとあって…母は私と違ってすごく痩せてるんです。」

大学進学のために上京し、2年生になった2013年、プラスサイズファッション誌としてヒットした【la farfa】が創刊。安藤さんがモデルデビューしたのは2号目からでした。

「本当は地元にいたときから芸能人になりたかったんです。だけどいざオーディションを受けてみると周りは痩せてスタイルが良い子ばかりで。『痩せないと芸能人にはやっぱなれないのか』みたいな現実に何回も直面して、そろそろ私の夢は終わりかな、と。諦めかけていた時に【la farfa】創刊のニュースを見て、『これは私のためのチャンスだ!』と応募しました。オーディションでは気合いを入れて普段、周りの目を気にして穿けなかったショートパンツを穿いて行って、『誰でもショートパンツを穿ける社会を作りたいんです』みたいなことを言ったのを覚えています。

芸能人になりたかったけど、体型的にモデルは一番あり得ないと思っていたので、ポージングなんて一切できませんでした。そこで色んな雑誌を読み込んで、すごく研究しました。モデルとしての1年目はとにかく必死。緊張に負けずに笑うのが1年目の課題でした。今でもずっと『どうすればもっといい表現が出来るのか』と反省ばかりしている11年です。」

画像: オフィススタイルの安藤さん。仕事モードとあって、SNSで発信している姿よりシンプルで大人っぽい

オフィススタイルの安藤さん。仕事モードとあって、SNSで発信している姿よりシンプルで大人っぽい

時代と価値観の変化と共に盛り上がる
プラスサイズファッションシーン

【la farfa】創刊と同時期にハイファッションのコレクションやモード誌でもプラスサイズモデルが起用され、「ボディポジティブ」が謳われるようになり、日本でも少しずつプラスサイズブランドが増加。着用モデルが必要となり、【la farfa】はプラスサイズモデルのエージェントとしての機能も持つようになります。安藤さんもAEONが展開するプラスサイズブランド「ノアンヌ」の着用モデルとなり、その経験がモデルとしての成長になったと話します。

「私がモデルを始めた頃はまだSNSが流行る前で、自分で自分が撮られている姿を見る機会がなかったんです。だからのちに『ノアンヌスタイル』というノアンヌのコーデInstagramを自分で更新することになって、編集部の人に1コーデ100枚ぐらい撮ってもらって、それをバーっと見て、自分ならどの写真を使いたいかを考えながら選んでいたのが本当に大きかったです。客観的な視点を持つことができたし『私ってここがチャームポイントなんだ!』とか『こう動いたらスカートがきれいに動くんだ』とか、とても勉強になりました」

画像: 創刊当初の【la farfa】。しばらく渡辺直美さんがカバーガールを務めていた

創刊当初の【la farfa】。しばらく渡辺直美さんがカバーガールを務めていた

「モデルを始めて5年経った頃から、ずっとピンクヘアにしたいと言ってたんですけど『使える企画が減るからピンクはやめてね』と止められていたんです。広告の仕事も呼ばれなくなるかもしれないし……。2ヶ月くらい撮影が空くタイミングで『何か言われたら茶髪に戻せばいいか!』と思い切って2019年にピンクヘアに挑みました」

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安藤さんのようなプラスサイズのモデルたちが自由に自分を表現するようになり、プラスサイズブランドのバリエーションも増加。【la farfa】に掲載協力してくれるブランドは創刊時の5倍に。ラファモ(la farfaモデル)とのコラボ商品や、ラファモがディレクターを務めるブランドも誕生しました。

画像: ラファモがプロデュースしているシューズブランド『la farfa SHOES』。甲高・幅広の足でもストレスなく履ける設計で、読者から熱い人気とリピート率を誇る

ラファモがプロデュースしているシューズブランド『la farfa SHOES』。甲高・幅広の足でもストレスなく履ける設計で、読者から熱い人気とリピート率を誇る

モデルから編集長へ抜擢
読者とブランドをつなぐ存在に

モデルになって10年という節目の年、安藤さんは【la farfa】編集長に就任します。モデルから編集長へ転身するのは異例のことで、話をもらってから1ヶ月、悩みに悩んだそう。大抜擢でしたが、独自のスタイルを持っていたり、日頃からSNSで自分の考えを発信していたことから、これ以上の適役はいないと前編集長に背中を押され、決意を固めます。

「本当に青天の霹靂でした。話をいただいて、自分の中の答えは『やる』しかなかったけど、メンタルが弱すぎる自分が果たして本当にできるのか不安で。断ったら絶対に後悔するのはわかっていたけど、編集部のみんなが夜通しズタボロになりながら働いているのを見てしまっているから……(笑)すぐに引き受ける勇気はなかったです。でも断る選択肢はなくて、1ヶ月間ひたすらやりたいことを書き出したりして腹を括りました。

ただ、私がしてきたのはあくまで繋ぐ仕事。編集長になってからは読者やクライアントといった【la farfa】に関わるいろんな立場の人の意見を拾ってきた2年間でした。窓口的役割をしているのかな。顔が見えているからこそ意見を投げかけやすいでしょうし、読者と座談会を開催して、読みたい企画とかいろいろ聞いたうえで誌面を作るよう心がけてきました。ブランドへインタビューに行くこともあるんですが、どんな企業努力をされているのかもフレンドリーに話せる関係性だからこそ見えることもあるし、そこで私が感じた熱をまた読者へ伝える。そういういい循環が生まれたかなと思っています」

画像1: モデルから編集長へ抜擢 読者とブランドをつなぐ存在に

読者の声を編集長である安藤さんが聞き、それを反映した誌面や服作りをする。そんなサイクルができましたが、紙媒体の休刊が相次ぐ中、【la farfa】も定期刊行の紙雑誌としては休止し、新しい展開に入るとか。

「今までは“ぽっちゃり女子のおしゃれ応援マガジン”でしたが、これからは“ぽっちゃり女子のライフスタイル応援カンパニー”になります。雑誌時代同様、ファッションが主軸ではありますが、今後はより幅広い事業でぽっちゃり女子のライフスタイル全般に寄り添った活動を実施していく予定です。今年力を入れていく主な事業は4つ。

一つ目がメディア機能で、WEBとSNSを活用し、動画にも注力しながら情報を発信します。二つ目が『la farfa agency』というプラスサイズモデルのモデル事業。三つ目が今までもやってきた『la farfa SHOP』や『la farfa PARTY』といったオフラインのイベント事業。それから『la farfa Labo』という、服以外のぽっちゃり女子のお悩みを解決するアイテムを企業さんと一緒に作る事業も現在進行中です。股ずれ防止アイテムや前髪のベタつき対策グッズとか。ぽっちゃり女子ならではの悩みを解決するアイテムを作っていく予定です。

今まで、ぽっちゃりした人向けの雑誌として【la farfa】という名前が定着しているので、何か新しいことをするときにひとつのブランドとして成り立っているわけです。たとえば料理教室体験とかトレーニング体験をやるにしても、やっぱり人の目が気になるという声を聞くんですよね。そういう意味では『la farfa〇〇』と銘打った方がやりやすいというか、参加者も安心してくれると思うんです。【la farfa】とつくことで『大きいサイズ』と言わなくても伝わりますし、無理に『大きいサイズの』って掲げなくてもいいじゃないですか。知らない人からしたら関係ないし、知る人ぞ知るって言うとちょうどいいのかな。【la farfa】がそんな意味を持つ言葉に変化したのがこの11年間の歴史というかブランディングだったのかな、と。カタチは変わっても想いは変わらない、新たな【la farfa】の始まりです」

画像2: モデルから編集長へ抜擢 読者とブランドをつなぐ存在に

[profile]
安藤うぃ 1993年5月13日生まれ 161㎝72kg
岐阜県出身。大学在学中よりモデルとして活動を始め、2023年3月より【la farfa】編集長を務める。

Photograph/YUUMI HOSOYA
Text/ERI NISHIMURA

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