突然の返金要求
私が働いている某ファーストフード店では、昼のピークを過ぎると店内も少し落ち着きます。その日もレジ周りを片付けていると、1時間ほど前にホットコーヒーを購入された男性のお客様が勢いよく店内に入ってきたのです。
男性はレシートを私の前へ突き出し「家に帰ったらコーヒーが冷めていた。返金しろ」と強い口調で詰め寄ってきました。あまりの勢いに私は言葉が出ず、とにかく謝りながら話を聞くことしかできませんでした。
店長不在の緊迫感
男性は「ホットなんだから、客が飲むまでは温かいままなのが普通だろ」と何度も繰り返し、カウンター越しに身を乗り出してきました。しかしその日に限って店長は外出中で、頼れる人がいなかったのです。
どう対応するべきか迷っていると、厨房で作業していたアルバイトの宮川くんが「どうかしました?」と静かにこちらへ近づいてきました。
宮川くんの天然発言
事情を説明すると、宮川くんは男性に向かって「お客様のご注文されたものは、ホットコーヒーですか? それとも時間が経っても冷めない飲み物ですか?」と真顔で尋ね始めたのです。私は一瞬、何を言い出すのかと焦ってしまいました。
男性は少し苛立った様子で「ホットコーヒーだよ」と答え「ホットなんだから温かいまま提供するのが普通だろ」と声を荒げたのです。すると宮川くんは「ホットコーヒーをご購入されたとのことですね。でしたら、当店に不備はございません」とまるで当然のことを確認するかのように話しました。
さらに「時間が経てば冷めるという現象は正常でございます。もし冷めないコーヒーをご希望でしたら、現在は販売しておりませんのでご了承ください」と続けたのです。
店内に広がる笑い
その瞬間、近くでやり取りを聞いていたお客様たちから笑い声が漏れたのです。男性は周囲の笑い声に気づいたのか、気まずそうに急いで店を出ていきました。
そんな中で「冷めるのは当たり前なのに、変なお客さんだよね」と最後まで天然発言を続ける宮川くん。私もつられて笑ってしまいました。宮川くん本人は、何がおもしろいのか分かっていない様子でしたが、それがまたおかしくて、店内にはようやくいつもの空気が戻ってきたのでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

