家族で温泉旅館に泊まったとき、暗い廊下を怖がる次女を、長女が不思議な言葉で励ました場面がありました。見えないけれどそこにいる……。亡くなったご先祖様の存在を感じた、私自身の忘れられない体験です。
古いけれど快適な旅館
家族で訪れたのは、少し年季の入った温泉旅館。ですが、建物は古いものの清潔感があり、料理はビュッフェ形式でどれもとても美味しくいただけました。
そして、温泉やプールはリニューアルされていてピカピカで快適。特に不自由なく、家族みんなのんびりと過ごしていました。
不気味で暗い廊下
私たちが泊まったのは7階の部屋で、フロアの半分が客室、もう半分は「Meeting Room」と表記されていました。学生の合宿や企業の団体利用があるときに使うそうですが、その時期は誰も利用しておらず、廊下は暗く電気もついていません。
エレベーターを降りて左側は明るい客室ですが、右を見ると、長い廊下の突き当たりに非常灯の緑のランプだけがぼんやり光っていて、不気味な雰囲気を漂わせていました。
長女の不思議な励まし
次女はこの廊下を通るたびに怖がり、夫や私にしがみついて歩いていました。そんな泣きそうになる妹を見て、長女が声をかけます。
「『大丈夫』って言ってくれてるし大丈夫だよ、みんな見ててくれてるから」と。その言葉に私も「そうだよ、パパもママもいるよ」と重ねました。すると長女は「パパとママだけじゃないよ、みんないるから大丈夫」と言うのです。
私が「他のお客さんのこと?」と尋ねると、「ううん、ひいおじいちゃんとママのひいおじいちゃんと、ひいおばあちゃんも。みんなここで守ってくれてるんだよ」と答えました。
長女とご先祖様への感謝
長女が挙げた名前は、10年以上前に亡くなった私の祖父母たちで、長女は生前に会ったこともなく、写真を見せたことすらありません。それを聞いた夫と私は思わず顔を見合わせましたが、次女の表情は一気に明るくなりました。
「そっか、みんながいてくれるなら大丈夫なんだね。会えないけど近くにいてくれて嬉しいね」と安心した様子。次女を励ましてくれた長女の不思議な発言と、守ってくれているご先祖様に感謝した心温まるエピソードとなりました。
【体験者:20代・女性学生、回答時期:2024年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

